第46章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
「アイツのことだ、美味いもん食わせればすぐ思い出すんじゃねぇか?」
「政宗、いい事言った!信長様、明日の朝餉は是非空良の好きなものを揃えましょう」
秀吉が妙案だとばかりに身を乗り出す。
「そうだな。政宗頼めるか?」
本能寺から連れ去って来たばかりの頃、俺を憎みながらも奴の食欲だけは落ちる事がなかったからな。
「もちろん。お任せを!」
「頭を強打して記憶を失ったのでしたら、同じ衝撃をまた加えれば記憶が戻るのではないでしょうか?」
次は三成の案が飛び出す。
「三成、お前は黙ってなよ。あの子にまた頭を強打しろとでも言いたいわけ?」
「家康様…そうではありません。頭を強打する事と同様の衝撃を体験されれば戻るのではないかと……」
「なる程……」
三成の言葉は一理あるのやもしれんが、家康の言う通り、奴の心身のどちらかに衝撃があると言うのは、特に今は避けたい。
「とにかく、空良本人が俺たちを恐れている今、無闇に記憶を取り戻させるような事はしたくはない。城内の者全てにふれを出し、外部にこの事が漏れぬよう箝口令を敷くこととする」
俺を恐れている今、無理に空良を天主に連れて行くことをやめ、今夜は本丸の奴の部屋で過ごさせる事とした。
……とは言え、
「眠れん………」
戦や視察で外に出ているのならまだしも、こんなにも奴が近くにいて離れて眠るなど数えるほどしか無い。
それに記憶障害以外、体に大事は無かったとは言え何か体調に異変でも起きたらと思うと気が気ではない。
「……横で眠るだけだ」
そうだ、本丸で奴を一人で寝させるなどあり得ぬ!
何があろうと奴を守ると誓った俺は、奴の眠る部屋へ行くことにした。