第46章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
(ふふっ、本当に可愛いっ!)
目に入れても痛くないほど可愛いって言葉は本当で、吉法師が可愛くて仕方がない。
愛する人と結ばれ子まで授かり、何不自由ない生活をさせてもらっている。そんな事が私の人生に訪れるなんて本当に考えていなかったから、信長様と吉法師と過ごす日々はかけがえのないもので、私は本当に幸せだ。
これから先何が起こってもこの気持ちだけは忘れない。
だから今年の信長様の誕生日には、着物と一緒に感謝の気持ちと大好きな気持ちをたくさん伝えよう。
私は信長様の事が本当に———
「! 吉法師危ないっ!」
中庭に通じるこの部屋はこの時期は開け放っている。
その中庭から飛んできた蝶々を追いかけて吉法師が縁側の方へと走って行き縁側に近づいている事に気が付いていない様子。
慌てて追いかけた私は吉法師の腕を掴み彼を抱きしめ間一髪で落ちるのを阻止したのだけれど、
「!」
勢いのつき過ぎた体は止める事はできず、
「っ、吉法師!」
小さな我が子を胸に抱いたまま、そのまま縁側から落ちてしまった。
・・・・・・・・・・
「空良っ!」
城下の視察に出ている途中で、空良が怪我を負ったとの知らせを受け急ぎ戻って来た。
奴を寝かせていると言う部屋まで来ると、その部屋の前の廊下で侍女と医師が正座をしている。
「御館様っ!」
俺の姿を見て二人は深く頭を下げた。
「そんなのはいらん!頭を上げよっ!」
(形式的なものなどどうでもいい!奴の容体が先だ!)
「空良が怪我をしたと聞いたが如何した?なぜ部屋の外におる?」
(部屋の外で待機するなど、余程の状況なのか?)
以前奴が吉法師を流しかけ生死を彷徨ったあの地獄の様な絶望感を思い出す。
「いえ、空良様は確かに吉法師様を庇って縁側から軒下に落ちてしまいましたが大きな怪我はございません」
「そうか。ならば…」
一刻も早く奴の元気な顔が見たく襖に手をかけると、医師と侍女が再度深く頭を下げて「お待ち下さい」と俺を止めて来た。
「?…もしや空良でなく吉法師が怪我を負ったのか?」
煮え切らん奴らの態度に苛立ちが込み上げる。