第46章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
明日はいよいよ信長様の誕生日。
「出来たっ!」
去年同様に、今年もお着物を贈る事にした私は、出来上がった着物を持ち上げてその出来栄えを確認する。
「うん、綺麗に仕上がってる」
信長様への思いをたくさん込めて縫ったこの着物。
「喜んでくれます様に……」
信長様はきっと何を贈っても喜んで下さるって分かってはいるけど、明日の事を考えドキドキしながら、棚の中へ仕上がった着物を置いた。
「ははーーーっ!」
刻を見計った様に、吉法師の声が廊下から聞こえて来た。
「ふふっ、帰って来たのね」
お裁縫道具を片付けて吉法師が襖を開けるのを待つ。
「ははっ!たーいま」
「吉法師、お帰りなさい」
一歳八ヶ月になった吉法師はこの頃よく走りよく喋る様になった。
「空良様すみません。お散歩を終えたらどうしても空良様の元へ行くのだと言われて…」
吉法師の侍女が申し訳なさそうに部屋へと入って来る。
「大丈夫よ。もう用事は済んだから。いつも吉法師の面倒を見てくれてありがとう。ここからは私が見るからゆっくり休んで」
「ありがとうございます。では私は一旦下がらさせて頂きます」
侍女は頭を下げて部屋を後にした。
「ははー」
「ふふっ、吉法師おいで」
膝をポンポンとすると、吉法師は嬉しそうに私の膝の上へと乗って来る。
信長様との間にできた我が子は日毎に信長様に似て来てとても可愛く愛らしい。
「すごい汗、たくさん走ったの?」
「うん!」
「じゃあお着替えをしましょう」
「いや!」
「嫌なの?でもベタベタして気持ち悪いでしょ?」
「いや!」
最近の口癖は”いや”。自我が芽生えて前の様にすんなりとは行かなくなって来た。
「でも吉法師が風邪をひいてしまうと母が悲しくなってしまうけど、本当に嫌?」
「うーーん。わかった」
私が悲しくなってしまうと言うと、吉法師は困りながらも最後は私に譲ってくれる。こう言う優しい所は信長様譲りで、将来はたくさんの姫達の心を掴むのではないかと、母としては嬉しい様な複雑な気持ちだ。
「ふふっ、ありがとう。じゃあお着替え持って来るから待っててね」
「はーーい」
吉法師は小さな手を目一杯上に上げた。