第45章 夢が見せる奇跡 〜年末年始特別編〜
お祭り騒ぎのような広間には、お酒も食事もどんどん運ばれてくる。
「空良、酌をしてくれぬか」
父上様が盃を持って私に向ける。
「あ、はい」
お銚子を持ってお酒を注ぐと、
「空良、俺にも注いでくれ」
信長様も盃を私に向けた。
「はい」
そして私はそこで気づく。
これは、小夜ちゃんの言っていた嫁と舅の関係ってやつでは……!
(が、頑張らないと!)
ちゃんとしなければと言う急な緊張感に襲われ、父上様が今後何を必要とされるかを考えながら、寝床の用意や湯浴みの準備、お着替えなどの用意をした。
「信長よ、久しぶりにやるか」
お酒がかなり進んだ頃、父上様がそう言うと、
「お受けします。手加減はしません!」
信長様はそう答えて、二人ともその場から立ち上がった。
何を始めるかを察した家臣は広間の前の中庭へと降りて行き大きな円を描いた。
(何が始まるの?)
ドキドキしながら見ていると、二人は上半身の着物を脱いで裸となり、円の真ん中に立って中腰に構えた。
(……あっ、相撲だっ!)
わぁっ!と周りから歓声が上がり、円の周りにはあっという間に人だかりが…
「随分と逞しくなったな」
「あの頃とは違います」
そんな会話が聞こえて来そうな二人の取り組みは両者一歩も譲らず、押しては押し返し、掴んでは掴み返しを繰り返し、最後は……
ドサッ!!!
信長様が父上様を円の外に投げて勝敗はついた。
わあっっ!!!
とまたもや歓声が上がると、秀吉さん達はじめ力自慢の家臣達も上半身の着物を脱いで相撲を取り始めた。
新年の冷たく澄んだ空気の中、男達の体からは湯気が立ち上る。
そのなんとも言えない男くさい光景に、しばらくは目を奪われた。