第45章 夢が見せる奇跡 〜年末年始特別編〜
そして私は、不思議な夢を見た。
目を開けると、広間にて家臣を集め新年の挨拶を信長様がしていた。
(あれ?いつの間に朝になった……?)
それに吉法師も私の膝の上にちょこんと座っている。
不思議に思いながらも、新年の挨拶を家臣たちにする信長様の凛々しさに見惚れていると、ドカドカと廊下を歩きこっちへ向かって来る音が聞こえて来た。
「空良、吉法師を連れてこっちへ来いっ!」
信長様から少し離れて座る私に信長様がそう言い足音に神経を集中させる。
広間にいる家臣たちも皆刀の柄に手を添えて広間の入口に体を向けて睨んだ。
私も信長様に言われた通りに吉法師を連れて信長様の元へと行き開かれた襖を見つめた。
豪快な足音はどんどん近づき、ついに広間へと辿り着いた。
「なんだなんだ?正月だと言うのに殺気だっておるな。敵襲でもあるのか?」
そう言いながら豪快に部屋へと入って来たのは、私知らない男性……
(誰……?)
そう思っている私の横で信長様は固まったようになり、
「……っ、父上……!」
思いがけない言葉を口にした。
(えっ、信長様の父上様っ!?)
確かに…信長様に似ていない事はないけど、とても豪快な武士って感じだ。
「信長っ、久しいなっ、達者でやっておるかっ!」
その男性はそのまま上座まで来てドカッと信長様の横に腰を下ろした。
「父上…どうして……」
信長様にしては珍しく呆然としながらも、上座をその男性へと譲った。
「貴様が妻を娶り嫡男を儲けたと聞いたゆえな。正月の祝いを兼ね顔を見に来たまでの事。祝いの品だ、受け取れっ!」
体を外の庭に向けて手を広げると、仕留めたばかりであろう猪や鹿、酒樽、米俵など、家臣達が次々と運び込んで来て置いて行く。
「正月だ、くだらぬ挨拶などやめて騒ぐぞ!城の者どもを皆呼べぃ!」
驚いていた信長様だけれど、
「はっ!…秀吉っ!皆に伝えよ、今日は無礼講だ!」
ニヤリと笑って秀吉さんに命じた。
「政宗っ!料理は貴様に任せた」
「はっ、腕によりをかけますっ!」
父上様の突然の訪問で、お城中がたちまちお祭り騒ぎとなった。