第44章 私の育った故郷では 〜信長様誕生日sp〜
〜そして次の日〜
「世話になった」
信長様は昨日とは打って変わってとてもご機嫌なご様子。
「ははっ!もったいないお言葉。信長様、道中お気を付けてお帰り下さい」
私と浮気をしていると疑われていたとは知らない嘉正様は深々と頭を下げた。
「嘉正様ありがとうございます。本当に大変お世話になりました」
私はフラフラする体を何とかバレないよう信長様に支えてもらいながら嘉正様にお礼を伝えた。
「空良 、達者でな」
「はい。……あの、そう言えば、嘉正様の奥方様はどちらにいらっしゃるのですか?」
色々とゴタついてしまって、嘉正様ご夫妻にお祝いの品を持って来た事をすっかり忘れていた。それに、昨日から一度も奥方様にお会いできていない。
「?…いや、俺はまだ伴侶は迎えていないが?」
「え?」
「ん?」
「「………」」
お互いに訳が分からないと言った顔で暫し見つめ合った。
「……あの、確か奥方様を迎え入れられたと聞いて来たのですが…」
何だか嫌な予感が…
「ああそのことか。……いや、まだ迎えてはいないが、じきに祝言をあげる予定ではいる」
「何だ、そうなんですね………って、ええっ!」
(って事はまだ独り身って事!?)
「でっ、でっ、でも確か光秀さんが…」
伴侶を迎えたって…
(あれ?って事は私…、まだ独り身の嘉正様に文を出して、宴を抜け出し二人きりになったってこと!?)
これは信長様に浮気と勘違いされても仕方がない。
そーーっと、信長様を見ると、
「この阿保が、まんまと光秀の策に乗せられおって」
「うっ、その通りです」
(いじめる気にならないって言ったのに光秀さん酷いっ!)
「で、でも信長様はっ?」
(信長様も騙されてたってこと?)
「俺は最初からそのように聞いておる。この阿保が」
二度目の阿呆を頂きました。
「……ごめんなさい」
例え祝言を挙げ終えていたとしても、やはり殿方に、しかも妻と言う立場にある者が火急の用事でもないのに文を出すなどあってはならないことだ。
色々と勉強になったけど、光秀さんには絶対に帰ったら嫌味の一つでも言ってやる!〔そして空良は返り討ちに遭う〕