第44章 私の育った故郷では 〜信長様誕生日sp〜
「もうそれ以上はいい、良く分かった」
「信長様?」
「下らぬ嫉妬心で貴様の不安を見逃すなどあってはならない事をした。許せ」
信長様の腕に力がこもる。
「浮気を疑われたのは、正直驚きましたし傷つきました」
私が信長様以外の殿方とそのような事をすると少しでも思われたのなら悲しい。
「あれも許せ。本心ではないが本心でもある。貴様が嘉正に文を送ると聞いた時から、その時から俺は貴様を嘉正に会わせたくないと思っていた」
「そんな時から…!」
(そんな前からなんて、全然気が付かなかった)
「文は、本当に何もやましい事は書いておりません。信長様のお誕生日のお祝いの宴を開いてほしい事と、先程の反物を買う手配をして欲しいとお願いをしたまでです。でも、嫌な思いをさせてしまったのならごめんなさい」
私だって、信長様に来る女人からの文はやはりいい気がしないもの。
「貴様の言う通り、俺は貴様が俺以外の男と話すのも文をやり取りするのも面白くはない」
「……っ、」
どうしよう。こんな時なのに顔がにやけてしまう。
「何がおかしい?」
思った通り、信長様は私の緩んだ顔を見て不愉快に顔を歪ませた。
「ご、ごめんなさいっ、何だか嬉しくてなってしまって…」
さっきみたいに冷たい目で浮気を疑われるのは肝が冷えたし悲しかったけど、こんなにもしおらしくやきもちをやかれるのは胸の辺りがくすぐったくなってしまう。
「俺は何も嬉しくはない。特に嘉正は貴様の初めての恋文をもらった許し難い相手。その相手に再び文を書くなど…腹立たしい」
要するに信長様は私の初めての恋文の相手にいまだ嫉妬をしていると言うこと?
ドキドキと胸がうるさく高鳴り顔が熱くなっていく。
「そんな嬉しそうに俺を見るな。己の不甲斐なさを痛感させられる」
少しだけ頬を赤らめフイッと目を逸らす信長様がどうしようもなく愛おしいくて、ぎゅーーーーーっと思いっきり抱きしめた。