第44章 私の育った故郷では 〜信長様誕生日sp〜
越前へ出発する日が来た。
「空良、忘れ物はないな?」
城門まで見送りに来てくれた秀吉さんが、忘れ物の確認をしてくれる。
「はい。大丈夫です。吉法師の事、宜しくお願いします」
「おう、任せとけ。せっかくの休暇だ。若君の事は城の者たちに任せてゆっくりしてこい」
「はい。ありがとうございます」
吉法師は、父と母がいなくなる姿を見ると泣くかもしれないので、先程機嫌のいい時を見計らって侍女に預けて来たのでここにはいない。
「あ、あとこれ持って行きなよ」
同じく見送りに来てくれた家康が小さな竹筒を手渡してくれた。
「これは?」
「何にでも効く万能薬が入ってる。何もないとは思うけど念のため」
「ありがとう。わざわざ調合してくれたの?」
「別に、あんた旅先だとよく体調壊すでしょ。まぁ久しぶりの故郷、楽しんでこれば?」
ぷいっと顔を背ける家康のこれは照れ隠しだ。
「家康ありがとう。すごく心強いよ」
「俺からはこれだ」
次は政宗が竹の葉の包みを二つポンっと私の手に置いた。
「これ…」
「越前までの道のりは峠越えばかりで茶屋などはあまりないだろうからな。腹が減ったらこれを食べろ」
「わぁ、お弁当?」
「お前と信長様の二人分だ。一人で全部食べるなよ」
ニヤニヤと政宗は相変わらずの近さで私を覗き込んだ。
「うっ、気をつけます」
「空良、挨拶が済んだのなら行くぞ」
先に愛馬に跨り待っていてくれた信長様が私に手を伸ばした。
「はい」
その手を掴んで信長様の前に乗せてもらう。
「留守は頼んだ。では行って来る」
「「「はっ!道中気をつけて、いってらっしゃいませ」」」
「それでは行って来ます」
城門に見送りに来てくれた皆に手を降り、私たちは越前へ出発した。