第44章 私の育った故郷では 〜信長様誕生日sp〜
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「えっ、嘉正様の御屋敷に泊まらせて頂くのですか!?」
「正確には、信長様が日置嘉正の館に滞在して差し上げるんだ」
「っ、それは、そうですけど……」
大名が宿泊するとは、その家にとって大変に名誉な事だ。
けど、
「信長様も嘉正様もそれを了承されているのですか?」
「なんだ、日置の家に泊まるのは何か問題があるみたいに聞こえるが?」
「それは…」
光秀さんは、日置嘉正様が私の元許嫁とは知らないのだろうか?
「あの、実は、日置嘉正様は私の元許嫁だった方で、その…」
そんな関係であった方の所に泊めていただくのは気がひけるし、信長様を巻き込んでゴタゴタした過去もある。
「お前は、羨ましいほどにいつまでも正直で真っ直ぐなままだな。案ずるな、お前と日置殿の事は俺も承知している」
どう説明すればいいのか迷っていたら、光秀さんはふっと笑って私の頭に手を置いた。
「俺はどうもお前だけは虐める気にならない。お前が気になるのなら他の宿にと言いたいところなのだが、いかんせん、お前の育った故郷は自然豊かな土地でな、田畑はいくらでもあるが宿と呼べる所がない…」
「うっ、」
それは、山深い田舎だから…宿場がなかった事を今更ながらに思い出す。
「確かに…お客人がいらした時はいつもお寺か私の屋敷にお泊まりいただいてました」
そこまでの大物が来るような土地では無かったし…
「それに、日置嘉正は今はもう伴侶を迎えて立派に日置家の当主をしている」
「えっ、伴侶を?本当ですかっ!」
「嬉しそうだな…いや、ホッとしたと言うところか?」
意地悪する気にはならないって言ったのに、なんて意地悪な質問を…
「っ、それは…嬉しいのは勿論です。嘉正様には幸せになって頂きたいと思っておりましたので…」
仕方がなかったのだとしても、私のことをずっと思い続けて探してくれていた嘉正様の気持ちに私は応えることができなかったのだから…
図星を指され俯く私に、
「まぁ、信長様も了承されている事だし、お前が気に止む事は何もない。それに、念願の里帰りだろう?何も考えず楽しんでこい」