第44章 私の育った故郷では 〜信長様誕生日sp〜
「空良、七日後、越前へ行く段取りが着いた。旅支度をしておけ」
夕餉前、湯浴みを終えた吉法師の頭を乾かしていると、同じく湯浴みを終えた信長様が部屋へ入るなりそう口にした。
「……えっ?越前にですか?」
「そうだ」
「でも…」
「どうした?行きたくないのか?」
「いえ、そんな事は…」
でも七日後は、その日は信長様の誕生日で色々とお祝いの計画を立てていたのだけど…
「いつか貴様を故郷へ連れて行ってやりたいと思いながらも、様々な事が重なり実現できずにいたが、ようやく叶う」
信長様は私の頬に手を当て微笑んだ。
「信長様…」
(ずっと、気にかけくれていたんだ)
「嬉しいです。ありがとうございます」
会場の手配や料理の手配など、秀吉さんや政宗を巻き込んでかなり進めてしまっていたけど、事情を話せばまだ日にちを変更してもらう事はできるはず。
「じゃあ吉法師の着替えはたくさん持った方がいいですよね」
(途中で何度も着替えさせないといけないだろうし)
「いや、今回吉法師は連れて行かぬ。俺と貴様の二人だ」
「えっ?」
「最近は侍女でも泣かずに機嫌よく眠りにつくと聞いている。夫婦水いらずもたまにはよかろう」
信長様は私の髪をすいて引き寄せると、艶のかかった声で耳元に囁いた。
「っ、はい……」
「楽しみだな」
そう言って笑いながらゆっくりと唇を重ねた信長様は、まるで私の唇を楽しむように何度も重ね直す。
「っ……ん」
やがて深くなった口づけは、夕餉の膳が運ばれて来るまで続いた。
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次の日から私は計画変更と旅支度に追われた。
秀吉さんや政宗は「問題ない、心配するな」と言って計画変更をすんなり受け入れてくれたけど、問題は越前に行って信長様の誕生日をお祝いできるかどうかだ。
せっかく連れて行ってくださるのだから、私の故郷をよく知ってもらいたいし、好きになってもらいたい。
「あっ、こうしちゃいられない、光秀さんに宿の手配とか確認しないと」
信長様の事は大抵は秀吉さんが管理されているけど、私に関わる事は光秀さんと言う事になっているから、今回もきっと光秀さんなはず。
善は急げと思い、光秀さんのお部屋に当日の予定を聞きに行く事にした。