第43章 大掃除も楽じゃない〜新年特別編〜
「い、いえっ、何も」
けれども私は諦め悪くその羽織ごと背中に隠した。
「ふっ、その反応こそが隠していると言っているとなぜ分からん?」
信長様は楽しそうにジリジリと私に近寄ってくる。
「本当になんでも…あっ!」
力強く腰を引き寄せ抱き締められると、いとも簡単に羽織を奪われた。
カラン、コロコロ…と、桐箱が落ちて蓋が開き、その中から例のモノが転がった。
「………っ!」
「…ほう」
信長様の口角が、分かりやすく上がった。
「こ、これは違うんですっ!」
何が違ってなんの言い訳なのか、恥ずかしさで混乱する中、信長様の腕を解いてソレを拾おうとすると、
「あっ!」
私より長い腕が先にそれを拾い上げた。
「…ほう、張形か…」
「そっ、それ…」
(信長様が選んで持って来たんですか?なんて聞けないっ!)
「ん?いや、懐かしいと思ってな」
「懐かしいっ!?」
(お馴染みさんなんですかっ!?ってこんなことも聞けないっ!)
「なんだ貴様…これが何か分かっておるようだな?」
私にソレを見せながら信長様はニヤリと笑う。
「そ、それは…こ、こけ…」
「ククッ、こけしなどと言って誤魔化すのは許さん」
「っ…!」
「これが何か、言ってみよ空良 」
(ヒィ〜ッ!なんて愉しそう!)
「それは…あの…男の人の…」
最後まで言うことが憚られごにょごよと口籠もっていると、
「まさかと思うが…貴様のか?」
信じられない質問が!
「ちっ、違いますっ!私のじゃありませんっ!広間に置いてあった信長様への献上品の中でたまたまソレを見ただけで…信長様が持っていらしたんじゃないんですか?」
(あっ!しまった!)
「ほう、俺の献上品に手を触れたと言うことか?」
「ちがっ、……うぅっ、違いません。ごめんなさい」
「いや、かまわん。だが、貴様がコレに興味を示すとは意外であったな…?」
「興味ってそんなわけ…っ!」
(と言うか、なぜここにあるのかを私が知りたいっ!)
気づけば、ジリジリと追い詰められていた私は寝所の褥の上へと移動しており、信長様は私の肩を押してそこに強引に座らせた。