第43章 大掃除も楽じゃない〜新年特別編〜
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小夜ちゃんと大晦日にそんな会話をしたことも忘れかけていた新年の夜…
湯浴みを済ませた私は吉法師を寝かしつけ信長様のお戻りを待っていた。
天主から外に出て本丸を見下ろせば、まだ灯りが灯っていて楽しげな声が聞こえて来る。
「宴…まだ終わりそうにないみたい」
(今日もたくさんのお客人が来てたみたいだし、今夜はお戻りになられないかも…)
昨年は宴に参加できたけれど、今年はまだ産まれたての吉法師を置いて宴に参加するわけにもいかず…、子どもは可愛くて幸せだけど…ちょっとだけ寂しい。
「…ん、さすがに外は寒い」
寒さを覚え部屋に戻ると、
「……あっ、献上品、もう届けられてる」
昨日広間にあった献上品の何点かが信長様の机の横に置かれていた。
信長様が何を選んだのか気になり近寄ってみると…
「……あっ!」
例の桐箱もそこにっ!
「これ…」
でも似ているだけで違うものかも知れない、と手に取った瞬間、
「空良、遅くなった」
信長様が戻ってきた。
「!!!!!」
慌てた私はその箱を戻す事ができず咄嗟に背中に隠す。
「の、信長様、おかえりなさいませ。お疲れ様です」
「ん」
信長様は短く答えると、私の前に立った。
「あ、あの…」
いつもならここで私が信長様の羽織を脱がせるから、それを待っているんだろう。
「?どうした?」
「い、いえ、」
片手でも何とかなると思い、私は信長様の背後に回って片手で羽織を脱がせていく。
でもやはりもたついてしまう。
「どうした?片手を怪我しておるのか?」
信長様は心配そうに振り返る。
「い、いえっ、何でもありません」
私は慌てて信長様の羽織を取り去りその隙にパッと箱を信長様の羽織に隠した。
(後は袂に入れてこっそりと戻しておけば大丈夫だよね?)
後で思えば、中身は何かを知らない事にして、そっと戻せば良かったのだけれど、しっかりと中身を確認してしまっていた私にはそんな事は考えもつかなかった。
「…貴様…今羽織に何を隠した?」
さすが天下人っ!その目を欺く事は無理だったようで…!