第43章 大掃除も楽じゃない〜新年特別編〜
「…大きいね」
沈黙を破ったのは小夜ちゃん。
大きいねと言いながら、その張形の表面を撫でた。
「さ、小夜ちゃん!?」
(な、なんて大胆な行為をっ!)
「ねえ、空良」
「な、何?」
「これ、見た事のない文字が彫られてるけど、外国製かなぁ?」
小夜ちゃんは細い指で外国の文字らしきものをなぞった。
「わ、分からないけど…そうなの?」
「だって、私の旦那のより全然大きい」
「さっ、小夜ちゃん!?」
(いきなりなんて事を!?)
そう、小夜ちゃんは以前から恋仲だった人と最近祝言を挙げたのだけど、それにしてもいきなりすごい事を口にした。
「遊女屋の人が南蛮人を相手にした時、見た事のない大きさで裂けるかと思ったって話を聞いた事あるもの」
「そ、そうなの?」
南蛮人は確かにこの日ノ本の人々よりも体つきが逞しく背も高いから、アソコが大きいってのも頷ける。(←コラコラッ)
「信長様はどう?」
「へっ?」
「やだ〜私にだけ言わせないでよ〜」
ばちーんっと、いつものテレ隠し平手が私の腕を打つ。
(イタイ…)
「えっと、信長様は…」
朝から致す会話じゃないと思いながらも、もう一度張形をチラッと見てみる。
(…あれ?信長様の方が…)
考えがそこまでよぎり、私は慌てて頭をブンブンと左右に振った。
「えっと…ソレの方が大きいかな?」
(ごめんなさい小夜ちゃん!嘘をつきましたっ!)
そんなに見ないけど、記憶を手繰り寄せる限り信長様の方が…
だって信長様は南蛮人に負けず劣らず鍛え上げられた体をしてるし背も高くてカッコよくてうっとりとしてしまうもの…
「そうだよねー、信長様でもこの大きさは流石にないよね〜。それにしても大きいよね、こんなの入るのかなぁ」
小夜ちゃんはもうその張形に慣れてしまったのか、手にとって眺め出した。
「そ、そうだね…」
入らないと思っても入るものだよとは絶対に言えない私は、ただただ頷いてドキドキする心の臓に手をあてる。
そして…
(信長様ってやっぱり…)
他の人を知らない私には信長様が全てだから他の人の大きさを考えた事はなかったけど…
「キツいはずだ」
「えっ?なんか言った?」
「ううん、何でもないっ!」
天下人になろうかと言う人は何もかもが特大なのだと、妙な納得をしてしまった。