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叶わぬ未来の夢を見る【イケメン戦国】

第42章 叶えられていく思い 祝言



「ふふっ、でも、日ノ本のお酒は知る限り飲んでしまいましたから、次はこの葡萄酒を飲み比べてみたいものですね」


私達夫婦の共通の趣味を耳にした各地の大名や商人が各地のお酒を送ってくれたり、信長様も視察に出られた時には必ず地元でしか手に入らない珍酒をお土産に持ち帰ってくれたおかげで、この日ノ本のお酒はほとんど口にしたつもりでいた私は、軽い気持ちで次は葡萄酒(わいん)を飲み比べたいなんて口走ってしまった。


「ほう、わいんの飲み比べか。それが貴様の次なる願いか?」


「え?……まぁ、そうですね。葡萄酒はこの日ノ本のお酒と同じで、国や天候によって出来栄えも味も違うと聞きましたし、可能ならば色々な物を飲んでみたいです」

この時はまだ、きっと貿易商の方にお願いして珍しいものを取り寄せて下さるのだと。そう思っていた。


ただ信長様はその日から三月ほど、かなり忙しく政務をこなされる様になり、各地の視察にも頻繁に出かける様になった。

そうこうしているうちに、私はすっかりその事を忘れていたのだけれど…



「空良、貴様との約束ようやく実現できそうだ。一月後、安土の港に隆佐の所有する商船が来てそれに乗る段取りもついた。出発できるよう支度をしておけ」


「……?はい。……えっと、どこか旅に出られるのですか?」
(隆佐さんの船なら大坂かな?それなら吉法師に久しぶりに会えるかしら)


「ああ、南蛮に渡る」

「そうなんですね。南蛮に………」
(………ん?南蛮?)


ふんふんと頷いていたけど…
私の知っている”なんばん”はただ一つ、南蛮しかなくて…

「あの…この日ノ本を出る…という事ですか?」

「そうだ、長旅になる。しかと用意いたせ」

信長様はそう言うと、ニッと楽しそう口角を上げた。


「まっ、待って下さいっ!そんな急に?」

「だから一月後の出発にした。猶予はある」

「そっ、そうではなくて、南蛮へ渡ると言うお話です」

南蛮になんて、長旅どころか悠に一年は戻れないんじゃあ…


「?貴様が言った事であろう?」

「……えっ?」

「わいんの飲み比べをしたいと言ったであろう」

「い、言いました…けど…」

「色々と準備に時間がかかったが、ようやく全てにケリがついた。長々と待たせたがこれで旅立てる」


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