第42章 叶えられていく思い 祝言
「空良」
盃を膳に置いた信長様は、熱い眼差しを私に向ける。
「…………ん」
大きくて温かな手が頬に当てられると、自然と顔を寄せ合い唇が重なっていく。
「貴様はこれからも何かを俺に望み続けよ」
「え?」
「どんな無理難題でも構わん、貴様がそれを望み続ける限り、それを叶える事が俺の楽しみとなる」
「でももう、全ての望みは叶いました。これ以上望むことなど何も…」
「”望み”でなくとも、”願い”でも構わん、何か言ってみよ」
「今ですか?」
「今だ」
「っ、じゃあ、浮気は、しないで下さいね?」
「貴様…俺が今まで一度でも浮気をした事があったか?」
「い、いえ…」
(だって何か言えって言うから…!)
「あとは何かないのか?」
「あとですか?えっと……あ!」
「なんだ?」
「あの、出来れば側室は持たず、妻は私だけがいいです」
「貴様の頭の中は、俺が浮気をすると既に決めておる様だな」
信長様はふうっとため息を吐き片眉を上げながら、訝しげに私を見た。
「そっ、そう言うわけではっ!でも私の願いは信長様をずっと独り占めする事だから、だから...ん」
ちゅっと唇を掠め取られた。
「ならば初めからそう言え、貴様の願い確かに受け取った。この信長が愛するただ一人の女として、俺をこれからも満足させよ。さすればその願い、一生叶い続ける」
「…っ、頑張ります」
結局これは、私次第という事だろうか?
「その頑張り、今宵早速見せてもらおうか」
「えっ、もう今夜から?……っん、」
黙れの口づけの合図だ…
するりと寝巻きの紐が解かれると、純白の寝巻きが肩から下げられ剥がされて行く。
「んっ、…」
優しい口づけが身体中に降り注ぎ、信長様色に染めあげられていく。
「空良」
「…っ、んっ…」
名前を呼ばれ目を合わせれば、苦しい程に長く甘い口づけが私を蕩けさせて行く。
「この夜を俺がどれほど待ち侘びたか……空良、愛してる」
熱い熱を身体に受け入れた後はもう何も考えられなくて…
好きで、好きで、大好きな人の腕の中、何度も上り詰め深く甘い快楽の中へと墜とされていく。
「…っ…ぁ」
出会って初めて肌を重ね合わせたこの天主で、今宵私達は永遠の夫婦の契りを交わし、飽きる事なく何度も愛し合った。