第42章 叶えられていく思い 祝言
「同じ酒を互いの身体に入れ合い、俺達は名実共に夫婦となった」
「…っ、はい」
その言葉に、ようやく自分は信長様の妻になったのだと実感し、早まる鼓動を更に加速させていく。
「私、とても幸せです」
「ふっ、俺も同じだ」
信長様は再び私の唇を掠め取ると、今度は照れた笑いを浮かべた。
「はぁ〜、そろそろ戻ってきてもらっていいですか?」
(ハッ!)
家康の呆れ声で我に帰る。
「いっ、家康っ!ごめん…あの…」
完全に二人の世界に入ってしまっていた私は慌てて居住まいを正した。
「いや、いいものを見せてもらった。信長様にあんな顔をさせるとは、お前はやはり大した女だ。実に見事な三婚の儀だった」
家康とは打って変わって政宗は爛々と目を輝かせ手を叩いて囃し立てた。
そしてそれに続いて周りの来客達も手を叩き出し、広間はあっという間に拍手喝采となった。
こうして私達の一風変わった三婚の儀は滞りなく?終了した。
その後の宴では、気がつけば城中の者たちが広間に入りきらない程集まってどんちゃん騒ぎとなり、私たちの祝言は賑やかに過ぎていった。
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皆より先に宴を後にした私達は、共に湯浴みを済ませ天主へと戻ってきた。
「…宴、まだ続いてますね」
夜が老けてもまだ賑やかな音が天主にまで届いている。
「酒の席は、情報交換にはうってつけだからな。それにこれだけ日ノ本全土から大名達が集まる事も珍しい。好きなだけ飽きるまで騒げば良い」
「信長様は戻って来てしまって良かったのですか?」
(本当はまだお客様達と話したかったんじゃ…)
「構わん、俺はこれから、好きなだけ俺の妻を抱く」
ニヤリと口角を上げた信長様は、私の髪を一房取って口づける。
「……っ」
私を射抜く目は、なんだかいつも以上に艶っぽく扇情的だ。
「…だがその前にこれだな」
すーっと信長様が私達の目の前に引き出して来たのは、お銚子と盃を乗せた膳。
「……お酒?」
(また?)