第42章 叶えられていく思い 祝言
「はぁ〜、分かりました。お二人でお好きにどうぞ」
家康はお銚子を私に預け、
「じゃあ俺たちはここで見届けさせてもらいます」
はぁ面倒臭い、と口には出さないまでも顔に出したまま一歩下がった。
「空良、緊張して酒をこぼすなよ」
そして政宗は楽しそうに口角を上げながら、意地悪な圧を私にかけた。
「…じゃあ、最初は信長様から、お注ぎしますね」
(う〜、緊張する〜、でもお酌ならずっとして来たんだから大丈夫)
信長様が手に持つ盃に、お銚子をゆっくりと二度傾け、三度目でお酒を注いだ。
信長様はその盃に軽く口をつけ、私の口の前へと差し出す。
粗相をしない様、ドキドキと手を出し盃を受け取ろうとすると、
「手に取らずとも良い、このまま口をつけよ」
「………っ」
まさに信長方式!?
大広間に座る全ての客人達の前で、私は差し出された盃を手に取る事なく、そのまま口だけをつけた。
「ふっ、上出来だ」
信長様はそう言うと、その盃の中身をクイッと飲み干した。
「次は貴様の番だ」
信長様はお銚子を手に取り、私は二つ目の盃を手に取る。
手順は先程と同じで、今度は私からだ。
注がれた盃に軽く口をつけ、信長様の前に差し出す。そして信長様はそのまま軽く口をつけ、最後は私が中のお酒を全て飲み干した。
(ぁ、喉の奥が熱い)
一度目とは違い、今回は確実にお酒が口の中に広がった。
そして三つ目の最後の盃を信長様は手に取る。
二回目までと同様に、信長様が口をつけ私が口をつけ、最後は信長様がくいっと飲み干し……
(良かった。無事終了だ)
と胸を撫で下ろした瞬間、
グイッ!
「…えっ!…んぅっ!」
急に口が塞がって、目の前には信長様の顔がっ!!
「んっ!んーーーー」
驚きジタバタする私に構わず、信長様は舌先で器用に私の口をこじ開け、お酒を流し込んできた。
「んんっ!」
ごくんっと、そのお酒は私の喉元を通り過ぎ、信長様は唇を離した。