第42章 叶えられていく思い 祝言
膳を持って来てくれたのは、政宗と家康。
「政宗、家康っ!」
二人が安土に到着した事は聞いていたけど、私は昨日は会ってはいけない事になっていたから、二人とは半年ぶりの再会だ。
「元気そうだな」
政宗はそう言うと膳を私たちの前に置いた。
旦那様を横にして思う事ではないけど、相変わらず男前で色気が溢れ落ちそうだ。(これは決して浮気心ではない)
「うん。政宗も元気そうでよかった。今日は遠い所から来てくれてありがとう。食事も、全て政宗が取り仕切ってくれたって聞いたよ?」
「お前の見事な食いっぷりは見ていて気持ちが良い。今日のために考えて来た特別な献立だ。残さず食えよ」
「うん。楽しみにしてる」
政宗の料理は何を食べても本当に美味しいから楽しみだな。
あっ、考えただけでヨダレが…
ジュルルっと、口内をヨダレが溢れ出した時、
「この分だと、腹痛の薬を煎じておいた方が良さそうだね」
家康の呆れ声が…
「あ、家康、…いやさすがに今日はお腹が痛くなるまでは食べないよ」
(本当は食べたいけど…)
「どうだか、あんたの大口食いで何でも食いは、俺のいる駿府でも有名だから…」
「ええっ、本当にっ!?」
(気をつけてたつもりだったのに、私いつもそんなにがっついてる!?って言うか、そんな事が噂で広まってるの!?)
思ってもいなかった残念なお知らせに衝撃を受けていると、クスッと家康は笑った。
「嘘だよ。まだこんな簡単な嘘に引っかかってんの?本当はその反対で、あんたの事は日ノ本一の美人だって噂されてるよ」
「えぇっ!ほっ、本当?」
それもそれで衝撃的だ…!
「だから馬鹿なの?今の今、嘘に引っかかるなって言ったでしょ!」
「あっ、そうだった…そんなはずないのにはしゃいじゃって…」
「ほんと、相変わらず必死すぎ(美人って噂は本当だけどね)」
「うぅ…気をつけます」
しょぼんとした私にクスッと再び笑う家康は、お銚子を手に持ち信長様に向けた。
「いや、いい。俺たち二人でやる」
「「「?」」」
「これは此奴にとって初めての酒だ。何であれ、此奴の初を他の者に奪われるわけにはいかん、酌をするのも飲ますのも俺だけだ」
「……………っ!」
余りの独占欲の強い言葉に私の顔はかぁっと熱くなり、お銚子を持つ家康の手も一瞬で引っ込んだ。