第42章 叶えられていく思い 祝言
今日は本当にいい天気だ。
差し込む日差しも、空の青さも眩しい。
安土城下には、様々な箇所にお酒やお祝いの食べ物が配置され、皆で今日の事を祝ってくれていると言う。
お城にも、入り切らないほどのお祝いの品が届いて大変なのだと、秀吉さんが言っていた。
「あなたと信長様は、とてもここの民に愛されているのね。宮中とは違い、この城はとても温かいわ」
私と同じ様な事を考えてくれていたのか、菖蒲様も素敵な言葉を言って下さった。
「菖蒲様…ありがとうございます」
お城の事や安土の事を褒められるのはとても嬉しい。
いつの間にか、私の帰る場所となったこの安土は、私の大好きな人が築き上げた日ノ本一の町。
そして、私は今日その大好きな人の妻となる。
「菖蒲様、…儀式って、大切ですね」
「何よ、急に?そんな事、当たり前でしょ?大切でなければ、古来より今日(こんちに)まで受け継がれるはずないんだから」
「そうですね。家族に、なるんですものね」
お互いを愛しいと思い合う気持ちがあり、その証である子も授かった。だから、祝言はしなくても良いと思っていたけど、愛しい人との事をたくさんの人に認めてもらい祝福される事がこんなにも幸せで、身が引き締まる事だったなんて…
「さあ、着いたわよ」
「はい」
大広間の襖の前に立つと、一気に襖が左右に開けられた。