第42章 叶えられていく思い 祝言
三成君が部屋を後にした後、吉法師も眠っていた事もあり、わくわくした気持ちで中身をすぐ確認した私は、
『ぶっ!…これって!?』
その中身に顎が外れそうなほど驚いた。
それは、男女の夜の営み方を絵で示した書物で、それはそれは丁寧に一つづつの体位の説明と名称が描かれていた。
(こんな事、確か前にもあったような…)
私も今は母となり大人の女性として、少しは勉強しようと思い、ちょっとだけ…
『なになに…?…つばめ返し?…やぐら立ち?…..っ!』
最初の方はいつもの感じ?な感じ?
でも途中からは…
(………む、無理かもしれない…)
昨日の湯殿での営みだって、恥ずかしかったと言うのに、あれ以上のことをできるのだろうか!?
(はっ!そう言えば以前…)
『恋仲と妻とでは抱き方が全然違う。あんなものでは無いぞ?知らぬのか?』
以前、信長様はこんな事を言っていたけど…あれは、この事を言っていたのではっ!
「ああ、だめだめっ!こんな事で根を上げてちゃだめだ。ちゃんと読み込まないと。妻になるんだから、信長様に飽きられない様に頑張ろう」
意を決した私は、その書物を一晩で読み切った。(頭にも一応入れた)
光秀さんの悪戯による私のこの大きな勘違いは、誰に正されることもなく、実に20年後の娘の祝言の日まで続くことになる…。
実際に全てを信長様と試したのかについても、それは夫婦の秘密。
・・・
「……また、何か必要な書物があれば仰って下さいね。家康様には及びませんが、書物の知識は私も少し自信がありますので」
「うん。ありがとう。これからきっと分からない事が増えて行くから、その時はまた宜しくね」
できればその時は光秀さんの助言抜きでお願いしたい…
「はい。…ああ、私のせいで足を止めてしまい申し訳ありません。信長様がお待ちです。どうぞ先へお進み下さい」
三成君の純粋で優しい微笑みをもらい。私はまた廊下を進みはじめた。