第42章 叶えられていく思い 祝言
「…ふっ、ふぇっ、ふぇぇ〜ん」
私の驚く声に驚いて、吉法師が泣き出した。
「わっ、吉法師、大きな声出してごめんね」
「ほらぁ〜、吉法師が泣いちゃったじゃない。それに何を今更驚いてるの?亜沙の任務には必ず明智様が同行されてるみたいだし?こんな世の中よ、いくら可愛そうだからって、高い金子を払ってまで亜沙を身受けするなんて、それしか無いじゃない」
「たっ、確かに…」
(そう言われてみれば…)
泣き出した吉法師を侍女から受け取りあやしながら、麻と光秀さんが京にいる頃どんな雰囲気だったのかを振り返ってみる。
(えっと、あの二人ってどうだったけ?会話してたりしたっけ?…あっ待って、確か初めて麻に朝に会った日に、少しだけお互いの恋話をしたような……でも…)
『......さぁ、どんな方......だったんでしょうか?間者となったこの身にはもう思い出す事も許されません』
麻の初恋は?と聞いた時、切なそうにそう言ってなかったっけ?
あれは光秀さんとの事?でもそれだと、恋仲ではないって意味にとれるけど…
「うーーん、京にいた頃は自分のことに必死で、あの二人がどうだったかなんて思い出せません」
光秀さんは読めない人過ぎるし、麻の過去にも深く触れたことが無いから、正直二人の関係が主従関係以上と言われてもしっくり来ない。
「あなたあの時必死だったものね。無理ないわ。けど私には分かるの。あの二人には二人にしか分からない何かがあるってね。あの子がまだ宮中にいた頃から、明智様の亜沙を見る目は違っていたもの」
「そう…なんですね?それが事実なら、とてもお似合いで、素敵ですね」
菖蒲様の読みが当たっているのだとしたらこんなに素敵なことはない。
美しくて聡明で私の大好きな麻と、同じく美形で切れ者の光秀さん。こんなにも最強で素敵なお二人はいないもの。