第42章 叶えられていく思い 祝言
祝言当日、こんなにも綺麗な空の色を初めて見た位、その日は見事な晴天となった。
「あら、よく似合ってるじゃない。さすが帝お見立ての着物ね」
帝の代理であり、私の此度の祝言の介添人を引き受けてくれた菖蒲様は、彼女らしい口調で褒めてくれた。
「菖蒲様、遠路はるばるありがとうございます。今日は宜しくお願いします」
「何、あなたもしかして緊張してるの?」
部屋に入り私の近くに来た菖蒲様は私の極度の緊張に気づきプッと笑った。
「っ、だって、各地から凄い方々が来るだけでも緊張なのに、こんな帝からの豪華な衣装で皆様方の前を転ばずに歩ける自信が…」
麻にしてもらった打掛の練習の成果も虚しく、身籠っていた事もあり、打掛は着慣れていなくてやはり苦手なまま…
「心配しなくても、誰もあなたなんて見ていないわ。今日の主役はもちろんあなただけれど、皆介添人である私に目が釘付けになる筈よ」
ふふんっと自信たっぷりに言い放つ菖蒲様は、やはり本日もお美しくて絶好調だ。
「そうですよね。菖蒲様が横にいて下さるんだから皆そちらに……あ〜それを聞いたら少し緊張が和らぎました」
「そうよ、あなたを見ているのはただ一人信長様だけよ」
「はい」
お世辞でも何でもなく、本日広間にいる人々は皆、菖蒲様に見入ってしまうに違いない。
公家の血筋もさることながら、彼女の持つ美しさと誇り高さは、やはり惹きつけられるものがある。
「それに、安土の武将たちがこれ程美丈夫揃いとは知らなかったわ」
「えっ?」
「ああ、あなたは出席してないから知らないと思うけど、昨日の前夜の宴で、伊達様や徳川様、石田様にお会いしたの。明智様は残念ながらいなかったけど、まぁあの方は亜沙がいるから無理よね」
「えっ?」
「何あなた、えっ?しか言えないの?」
「えっ、だって、今、麻と光秀さんが何とかって…」
(その口ぶりはまるで…)
「そんなの、誰が見たって明らかでしょう?」
「えっ?主従関係がって事ですか?」
「本当に、えっ、えっ、て煩いわね。別に亜沙に聞いたわけじゃないわよ?けどどう見てもあの二人は主従関係以上でしょ」
「えぇっ!」
(そうなのっ!?)