第5章 心の内
「んっ、......」
薬を口移しで飲ませろと言われ、言われた通りに飲ませていたら、突如頭を押さえられ、深い口づけに変わった。
(いつも通りに元気な気がするけど...........確かにさっきは毒針が刺さって辛そうだった)
「んっ、あの、.....もう辛くないんですか?」
信長の唇を押さえて口づけを止めて、体調を伺う。
「ああ、薬がよく効いた」
ニヤリと不敵に笑うその顔はいつも通りだ。
「.........そう.......ですか?」
家康さんて人の部屋を聞き出して薬をもらうまで苦労したけど、家康さんの薬って凄くよく効くんだ。
でも.........そんなに即効性........?
「............あの、本当にもう大丈夫なんですか?」
「大丈夫だと言っておる」
まるで最初から毒が効かなかった様に針が刺さる前と変わらず顔色がすごく良くて楽しそうな信長........
いくら魔王と呼ばれていたって、毒が効かない人なんて.......いないよね?
じゃあやっぱり家康さんの薬が効いたんだ。
.........とは言え、私の浅はかな考えのせいで、目の前の男は毒を身のうちに喰らう事になったのは間違いない。
もうこんな事が起こらないように、ちゃんと自分で終わらせないと。
「.........信長様、.....私を......今すぐお手討ちにして下さい」
信長から身体を離して頭を畳につくまで下げた。
「..........何の冗談だ?」
楽しそうだった声は、途端に冷気を帯びた声に変わった。
「っ、私をこのまま生かしておけば、私はあなたの命を狙い続ける事になります」
そして、その度にこの男は私に殺せと言って手助けをしようとするに違いない。
「それで構わん。貴様が失敗をする度俺は貴様を抱く事ができる。毎日狙ってくるものと思っておったのにアテが外れて困っておるぐらいだ」
「な、にを言って.....」
私を抱く為って、そんな事....本気で言ってるの?