第40章 叶えられていく思い 再会
「でもそれでも、お礼は言わせて下さい。何とお礼を言ったら良いか、分かりませんが……」
「礼の言葉などいらん、貴様からの礼は常に決まっておる」
信長様は私の唇をぷにっと押すと、ニヤリと口角を上げた。
「………っ」
礼は言葉ではなく褥の上で…と言う意味だろう。
信長様はふふんと笑うと、恐縮しながらも赤面する私の頭に口づけを落とす。
出会って間もない頃は、この言葉を言われる度に、あぁ私はやはり夜伽のみの侍女という関係なのだと心が痛んだけれど、これは、何も返す事ができない私への、信長様の最大限の優しさで、照れ隠しなのだと今なら分かる。
「……っ、一度では返しきれないので、できれば分割でお願いします」
お寺の建立に行方不明だった兄の捜索、更にはお寺の住職にまで就かせてもらい(優秀ではあるらしい事は分かった)両親のお墓まで……私の普通の暮らしでは手に入れることの出来ないものばかりを、どう褥の上で返せるのか…
「ふっ、俺に分割はきかん、何事も常に一括だ」
「でもこれほどの事、一括で返せる事では…っん!」
気を抜いていたら唇を奪われた。
「一度で返せる方法はいくらでもある」
「た、例えば?」
生き生きとした目に、何だか嫌な予感はあれども…
「例えば、そうだな、…貴様の顔がこれ以上無い程に赤くなる様な恥ずかしい事をさせるのも悪くない。まぁ余りそっちの趣味はないが、あらゆる道具を使って貴様を責め立て啼かせるのも一興だ」
信長様はさも愉しそうに、私の着物の袷に指を滑らせながら言った。
「……っ、それは…」
(できれば遠慮したいけど…)
「くくっ、もう顔が赤いが、まさか想像だけで興奮しておるのか?」
愛しい人は更に口角を上げて私の顎を掬い上げた。
「ちっ、違いますっ!…でも、それしか方法がないのなら…」
「方法が無いのならば、良いと?」
「っ、痛い事以外なら…….」
どんな事をされるのか、信長様しか知らない私には未知数だけれど、出来れば、縛り上げ吊るされ蝋燭責めみたいなことはやめて欲しい(←結構知ってる)