第40章 叶えられていく思い 再会
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感動の再会を果たした兄に別れを告げた後、信長様は私と吉法師を、墓所へと連れてきてくれた。
「落慶法要(らっけいほうよう)が済んだ後、開眼供養を行いここに貴様の両親を眠らせる。これからは、ここに来れば貴様の家族がいる」
信長様がそう言って見せてくれたお墓はとても立派な物だった。
私のお寺…とはこう言う意味だったんだ。
夜襲により実家を失った私たち家族に、信長様が新たに与えてくれた場所。
「私個人のために、こんな立派なお寺とお墓を……、これでは、他の家臣の方々に申し訳が立たないんじゃ……」
私を正室に迎える事だってきっと無理を押し通したのに、こんなお寺まで…
「この寺は確かに貴様の寺と言ったが、貴様と此奴の命を助け、織田家に嫡男を授けてくれた貴様の母への礼も兼ねておる。誰も異は唱えん」
信長様はそう言うと、手に抱く吉法師の頭をクシャクシャと撫でた。
「それでも……まだ若い兄上を住職にして頂いて…、探し出して頂いただけでもすごい事なのに…」
それこそ、これは身内贔屓だと、信長様のこれまでのやり方に反するのでは無いかと、私はやはり気が気ではない。
「空良、俺は貴様の兄を身内だからと言って住職に推したわけではない。身を寄せていた寺では、他の僧侶でも根を上げるような辛い修行を数多く乗り越え、しかも、戦や訳あって親のいない子供達の世話を引き受け面倒を見ていたと聞く。その寺の住職も、お前の兄なら務まると言っておったと光秀からは報告を受けておる」
「…そうなんですね。そのお話は、とても嬉しいです」
「それに、貴様の兄とは言え無能であると判断すれば、遠慮なくこの役を降りてもらうだけの事。ここから先は貴様の兄次第だ」
「はい」
兄上には兄上の、語れない程辛い苦労が沢山あったのだろう。でも、この戦乱において、私たちの様な家は数えきれないほどある中で、私たち兄弟はやはり恵まれているのだと思う。