第40章 叶えられていく思い 再会
「同じ名前なだけでお前なわけないと、明智殿が私を訪ねてくるまでは信じられなかったよ」
兄上はそう言って、光秀さんが兄上を探し出し訪ねて来た日の事を笑った。
信長様は、本当に兄上を探してくれていた。
「信長様…」
感動のあまり信長様を見ると、
「何だ?…俺に今すぐ口づけたい気持ちはわかるが、兄の前ではやめておけ」
冗談を交え何とも言えず優しい顔で笑うから、
「うぅ……はい」
止まったはずの涙がまた溢れた。
「………っ、兄を探して頂き、ありがとうございます」
「見つかったのは貴様の兄だけではない。この寺には、貴様の父と母の墓も立てた」
もう既に、感無量で心がいっぱいな私に、信長様は更なる驚きをくれる。
「……えっ?でも、父と母の遺骨などは何も…」
(嬉しいけど、お二人の遺品となるものは燃えてしまって、母上の懐剣以外何も残っていない)
「空良、父上と母上ならここに…」
私の言葉を聞いていた兄上は、懐から袈裟と同じ紋様の巾着袋を取り出し見せた。
「?」
「あの日、意識が戻った後、焼け跡から必死で探してこれだけ持ち出せた。皆ひどい有様で確証はないが、まるで守り合うように重なった骨が二体あって、間違いなく最後の最後まで父上が、母上を守った骨だろうと…」
「………っ」
(父上と母上の遺骨?……それが…この中に……?
会いたい…でも、怖い。
でも…)
兄上が手に持つ巾着に恐る恐る手を伸ばすと、横からそっと大きな手が添えられた。
(信長様…)
不安を隠せないまま信長様を見ると、
「大丈夫だ」
力強い目が、躊躇う私の心に強さをくれる。
「……っ、はい」
私たちは二人一緒にその巾着を手に取り中を覗いた。
「…………っ、父上、母上っ………っ、」
そこには、二人の小さなカケラが入っていて、
「やっと…やっと会えました。………っ、お帰りなさい、父上、母上……、私を守ってくれて、ありがとうございました。うっぅ…」
巾着袋を抱きしめ涙する私を、信長様が優しく抱きしめ包み込む。
長い年月をかけて、今日漸く、私たち家族はこの安土の地で再会を果たした。