第40章 叶えられていく思い 再会
どこかで生きていると思いながらも、もしかしたらもう…と、何度も嫌な考えが頭をよぎった。
あの日、何が兄上の身に起こったのか、どうして僧侶になったのか、どうやってこの安土に来たのか、聞きたい事は山ほどあるけど…、
「兄上、よくぞご無事で…」
兄上に生きて会えた。
あの夜から何度も夢見たこの瞬間を噛み締めたくて、信長様がヤキモチをやいて引き剥がしに来るまで、私は兄上に抱きついて泣き続けた。
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感動の再会を果たし、涙の抱擁を信長様に引き離された後、私たちはこれまでの事をお互いに話し合った。
兄上はあの夜、父と共に夜襲を迎え撃ち戦っていたが、燃えて落ちてきた柱の火の粉を被り、更に敵に斬られ倒れて意識を失った。
幸か不幸か、死んだと思われた兄上はそのままとどめを刺される事なく捨て置かれた。そして目覚めた時には屋敷は燃え落ち、屋敷にいた全ての者は見るも無惨な姿になっていたと言う。
不思議な事に兄上の周りだけが燃えておらず、これに関して兄上は、父上と母上が何らかの力で守ってくれたのだろうと、疑いもせず口にした。
「…私のせいで皆を巻き込んで、ごめんなさい」
私があの日、裏山に登りさえしなければ今頃は…
「あれはお前のせいじゃない。今も自分を責めているのなら、今をもってその考えを捨てるんだ。私も、父上も母上も、屋敷の者たち皆がお前を大切に思っていたし、お前が生まれた日の事を今だに鮮明に思い出せる程、お前は私にとって大切な妹だ」
「兄上……」
あまりの惨状に、呆然と立ち尽くす兄上に声を掛け助けたのが、焼け跡を見て経を上げに来た寺の僧侶で、兄は暫く身を隠す為、その僧侶が住職を務める寺に匿ってもらったそうだ。
兄上は私と違い犯人を知っていたけれど、将軍を相手にする事など出来るはずもなく、ただ、行方不明となっている私を機を見て探しに行こうと思っていたと言う。
ただ、すぐ治ると思って放置していた目が、治るどころか徐々に見えなくなり、それにより私を探そうにも探す事ができなくなり断念。その寺で剃髪し、僧侶の道へと進んだのだと教えてくれた。
やがて厳しい修行が明け僧侶となった頃、兄上もまた私の噂を耳にしたと言う。