第40章 叶えられていく思い 再会
「客人の相手なら、秀吉と家康に任せてきたゆえ心配無い」
「えぇっ!家康って、もうこっちに来て?と言うか、着いたばっかりって事じゃ…」
着いて早々客人の相手とは、家康のため息を吐く姿が目に浮かぶようだ。
「案ずるな、貴様が思う以上に家康は野心家だ。客人の相手にはうってつけだ」
「そうなんですか?」
家康の努力家な所は知ってるけど、野心家な所はまだ見たことがない。
「奴とは長い付き合いだからな。それより、俺には貴様との恋仲最後の逢瀬の方が大切だ」
「あ…」
予期せぬ急な甘い言葉に、かぁっと頬が熱くなった。
確かに、明日から私達は夫婦となる。
恋仲から夫婦に…だから、今日が恋仲としては最後の日。
そんな事を考えてくれていた事に驚くと共に、嬉しさが込み上げる。
「恋仲と言っても、もう子連れですよ?」
恋仲で、でも子供がいて、共に暮らしていて…と、私達の恋仲は複雑だ。
「ふっ、正しくは刺客から恋仲、そして夫婦だ。そして此奴は、俺たちが恋仲であった時に愛し合った紛れも無い証だ」
信長様は手に抱く吉法師を持ち上げて愛おしそうに見つめた。
「私達の、大切な宝ですね」
「そうだ。だがその宝もまだ増えていくだろう」
信長様は嬉しそうに微笑むと、ちゅっと私の唇を掠め取った。
「っ、まだ吉法師を産んだばかりで、気が早すぎませんか?」
「そんな事はない。これ程に貴様を愛しておるのだ、それ程時間はかからんはずだ」
次は悪戯に笑い、ちゅっと私の額に口づけを落とした。
「そ、そればかりは分かりません」
恥ずかしくて言葉を濁したけれど、どんなに忙しくても、褥を共にできる夜は抱かれなかった夜を埋めるかの如く愛情をたくさん注がれているから、その証が私のお腹に宿るのに時間はかからないだろう。
信長様は吉法師を片手で抱きながら、私と指を絡めて手を繋ぐ。
思い描いていた未来が現実となって今目の前にある事が幸せで、
「信長様、私とても幸せです」
何度でもあなたにこの幸せな気持ちを伝えたくなってしまう。
「なんだ、煽っておるのか?」
「ちっ、違いますっ!」
「煽るなら、城に帰ってからにしろ」
「だから違いますって!」
もう何一つ突然消えて無くならないように、私はこの幸せをくれた大きな手をぎゅっと強く握った。