第40章 叶えられていく思い 再会
「ここにおったか」
私と麻の座る長椅子の前で馬を止め、馬上から私を見下ろす顔は明らかに不機嫌で…
「…はい、今日は久しぶりに麻と会えましたので、この子のお散歩も兼ねてここへ…」
「共の者も連れずにか?」
「…っ、ごめんなさい」
(ヒィ〜やっぱり怒ってる!)
「信長様、今日は私がお誘いしたのです。この茶屋は城から一本道で、しかも死角になる建物もございません。帰りは必ずお送りしますので」
麻が隣から助け舟を出してくれたけど…
「麻の前で仕置きされるか、吉法師の前だけがいいか、選ばせてやる」
「………っ」
麻の言葉は聞く気は無いとばかりに、私に仕置きの選択肢を突き付けてきた。
「だぁーー」
何も分からない吉法師は、母の危機的状況も知らず、父上(信長様)を見てご機嫌な声を上げる。
「……あの、…吉法師の前だけで…お願いします」
快楽と言う名の仕置きを麻の前でされるわけにいかない私は(子供の前でもどうかと思うけど…)選ばせてもらえる間に素早く答えた。
「ふっ、そうか」
信長様は満足気に口角を上げると、馬からヒラリと降りた。
(うぅーー、怒られている最中だけど、こんな姿もカッコいい)
「麻、悪いが此奴を城に連れてってくれ」
「はい、かしこまりました」
信長様は愛馬の手綱を麻に差し出し、麻も笑いながら手綱を受け取った。
「それでは私はここで失礼致します。空良様、信長様、此度はおめでとうございます」
「うん、ありがとう。麻、また今度ゆっくり」
「はい。暫く任務でここを離れますが、戻った折には是非また。あと、愛のお仕置き、たっぷりと受けてくださいませね♪」
「もう…、他人事だと思って…」
(これからとんでもない口づけをされる身にもなって欲しい……いや、嫌いじゃないけど…)
返答に困る私を見て、ふふっと含み笑いをすると、麻は信長様の愛馬と共に茶屋から去って行った。