第40章 叶えられていく思い 再会
〜安土城下〜
「吉法師様、また大きくなりましたね」
昼下がりの城下、茶屋の軒下の席で、私は吉法師を連れて、久しぶりに麻と会っていた。
「そうなの!寝返りもするし、どこまでも転がっていくから目が離せなくて」
「ふふっ、信長様に似たのはお顔だけではないようですね」
「本当に、俺様な所もそっくりで、信長様が二人いるみたいで…」
「なんだか、困ってるってよりは嬉しそうですね」
「ふふっ、もっともっと似てほしいとは、思ってるかな」
半年前に産まれた吉法師は、お腹から流れかけた事もあり心配していたけれど元気に産まれてくれ、日々スクスクと成長し、どんどん信長様に似てきていた。(本当にかわいいの!)
京での滞在を終え侍女ではなくなった麻とは、その後もちょくちょくと今日みたいに茶屋で会い、交流を続けていた。
「でも、明日は祝言ですのに、ここで私と会っていても大丈夫なのですか?」
吉法師の柔らかな頬をツンツンしながら、麻は私の事を気にかけてくれる。
「料理は政宗にお任せだし、城内のことは秀吉さんと三成君が準備をしてくれてて、それに来客の方とも私は明日までは一応会ってはいけないみたいで、私は何もしなくていいって、当日までは吉法師とのんびりしててって言われてるから、いいみたい」
「そうですか。ですが…あの方は違うみたいですよ?」
「え?」
麻は笑いを堪えるような顔で路地に視線を移した。
「どの方?」
麻の言葉と視線が気になり見ると…
「……っ、信長様……?」
馬に跨り、一目散にこちらに向かって駆けてくるのは、私の最愛の人だ。
「どうやら、お迎えが来たようですね」
「う、うん…」
(麻に会うから安心して護衛の方に声を掛けずにプラっと出て来ちゃったこと、怒ってるかも…)
どんどん近づいてくる馬の蹄の音と、馬に跨る信長様の顔を見ると、やはり険しい顔をしている…
これはお仕置き確定な気がして、ブルッと体は小さく震えた。