第40章 叶えられていく思い 再会
「は?そんな事、空良を探しに行くに決まっておる」
思った通りの答えを信長は返して来た。
「なっ、そんな時間はありませんっ!もう間も無く客人達もこの城に集まって来ます。客人を待たせるわけにはいきません。空良の事なら心配は…って、信長様っ!お戻り下さいっ!」
秀吉の言葉に耳を貸さず歩き去ろうとする信長に、秀吉は慌てて声をかける。
「客人の相手なら秀吉、貴様と、そこの柱の影に隠れておる家康に任せた。頼んだぞ」
「は?俺は荷物の振り分けがっ、信長様っ!」
秀吉の叫び虚しく、信長は早足で本丸から二の丸へと渡り出て行った。
「……嘘だろ….」
「子が生まれたってのに、以前と何も変わってないみたいだな」
信長が去って行った方を見て唖然とする秀吉の肩を叩き、政宗が口を開く。
「それ以上だ。まぁ、天下統一がなされたと言ってもまだまだ不安定な状況が続く中、中々お二人の時間が取れないからな。だから今日みたいな日は空良にべったりで、文字通り片時も離したくないといった感じだ」
「お前の苦労も減らないって事か」
「まぁな、お気持ちは分かるが振り回されるこっちの身にもなって欲しいよな、……はぁ、早く戻って来て下さいよ。客人の相手も大変なんですから………、なぁ、家康?」
秀吉は、信長が指差した柱に話しかける。
「………っ、何で俺がいるって事、あの人分かったんだろう?」
納得のいかない顔をしながら柱から姿を現したのは、政宗同様に、半年ぶりの安土となる家康だった。
「お前は面倒な事や嫌な事があると、決まって柱の影や軒下、蔵の中に隠れてたそうだからな。信長様はそこの所をよく分かってるんじゃないのか?」
「………っ、いつの話ですか?あの人はほんとに……、はぁ、この様子じゃあ空良の苦労も目に浮かびますね…」
家康は照れ隠しで自身の癖毛を片手でクシャとしながら、空良の話題に触れた。