第40章 叶えられていく思い 再会
「おいっ、秀吉っ、空良はどこだ」
秀吉が感慨無量の面持ちでこれまでの一年を振り返っていると、信長が天主から降りて来た。
「……政宗、来ておったか。遠路よりご苦労であった」
信長は政宗に気付き声を掛ける。
「信長様、ご無沙汰しております。此度はおめでとうございます」
政宗は信長に軽く頭を下げ挨拶をした。
「貴様の祝いの膳、俺も空良も楽しみにしておる、頼んだぞ」
「はっ!」
「所で、秀吉、空良の姿がどこにも見当たらんが知らんか?天主から二の丸、三の丸、中庭と、どれ程探しても空良の姿が見当たらんのだ」
信長は、政宗との挨拶もそぞろに、再び秀吉に尋ねた。
「いえ、俺は今日はまだ会ってませんが……、」
「そうか、ならいい……。おい、貴様っ!空良を見なかったか?」
信長は、次は中庭の掃き掃除をする女中に声をかけた。
「空良様なら、吉法師様をお連れになって、城下へお散歩に行かれましたよ」
女中は聞かれ慣れているのか、用意していた様に言葉を返した。
「……何?一人、いや二人でか?」
「はい、お天気も良いですし、嬉しそうに出かけて行かれましたよ」
「っ、また護衛の者もつけず行きおって」
(死ぬほど危険な目に何度もあったと言うに、あやつの危機感は一体どうなってる?)
「あっ、それなら途中の茶屋で麻さんにお会いになると…………って、あら、もうあんな所に……空良様の事になると、ほんと御館様は心配症でいらっしゃる。ふふっ…」
女中はいつもの事に笑いながら、早足で歩き去って行く信長の背中を見送った。
「信長様っ、どちらへ!?」
だが、女中と違いその姿に秀吉は焦って信長を呼び止める。
「貴様も聞いておっただろう?空良が護衛の者も連れずに吉法師と城下に行ったそうだ」
「はぁ………、で、信長様はどちらへ?」
(麻に茶屋で会う事も絶対に聞こえていたはずだが…)
答えは大方分かってはいるが、秀吉は信長に質問をした。