第40章 叶えられていく思い 再会
「その荷物はこっちだ。……ああ、それは隣の部屋に運んでくれ」
安土城は本日、いつも以上に人々が出入りし、次から次へと荷物が運び込まれていた。
「おい、その荷物はそっちじゃない!天主へ運んでくれ」
秀吉はその中で、荷物の振り分けに忙しく立ち回っている。
「おう、秀吉、精が出るな」
聞き覚えのある声に忙しい体を振り向ければ、精悍な顔に眼帯を着け、自信に満ち溢れた男が立っている。
「政宗、今着いたのか?半年ぶりだな」
京での事件から半年後、政宗や家康は安土の情勢が落ち着いた為、それぞれの領地へと帰っていた。
「ああ、食材が無事に届いてるか、事前に確認しておきたかったからな」
政宗はそう言うと、人懐っこい笑顔を見せた。
「食材なら、全て厨に運ぶよう伝えておいたが、お前、あれだけの量の支払い済って、良いのか?」
(軽く数百人前以上はあったが…)
「俺からの祝いの品代わりだ。その代わり、料理全般は俺に仕切らせてもらう。あいつと信長様の食の好みは、俺が一番よく分かってる」
楽しげに笑うその顔に懐かしさが込み上げる。
「お前も客人として招かれてるのに悪いな」
「何言ってんだ、二人の祝言だってのに、大人しく座ってなんかいられないだろ?」
政宗は楽しそうに口角を上げる。
「そうだな。……信長様と空良の、俺たちにとって大切な二人の祝言だ。この日ノ本一の祝言にしてやらないとな」
秀吉も目を細めて穏やかな笑みを浮かべた。
「まぁ、とは言え、もう一緒に暮らしているし、お子もおられるからな。おいとま請いも、出立の儀もないから、宴だけの婚儀となるけどな」
秀吉はさらに言葉を付け加えた。
「そうか、もう産まれたんだったな。嫡男となる男子も産まれて、織田家は益々安泰だな」
「そうだな。あの京での事件から一年余り、色々あったが、漸く祝言まで漕ぎつけた」
(天下統一へ向けて、日ノ本全土の大名との和議や空良との婚姻を望まぬ重鎮たちへの説得、ああ、本当に忙しい一年だった)
秀吉は遠くを見つめ思いを噛み締める。それ程に、この一年は、秀吉含め安土の者達にとって忙しい一年であった。