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叶わぬ未来の夢を見る【イケメン戦国】

第39章 台風一過 後編




「はぁ、…ぁ、信長様……」 


「空良」


「ん……」


そのまま押し倒されると、袷に信長様の熱い手がするりと差し込まれた。


「ぁっ!」


この間の夜の続きが始まるのだと予感した途端……




「コホンッ!」


咳払いが一つ。

まるで安土での日々を彷彿とさせるこの咳払いは……


「ひっ、秀吉さんっ!?」

私は慌てて信長様から唇を離して咳払いの聞こえた方を見た。



「ククッ、あの生真面目男でなくて申し訳ない」

「みっ、光秀さん!」


元々、荷物を運び出すために開けっぱなしだった襖から笑いを堪えながら、光秀さんが姿を現した。


「秀吉は今頃安土だ。ここにはおらん」

「そ、そうですよね」


「……して光秀何様だ?秀吉の様なことをした理由を聞いてやる」

声に不機嫌さを滲ませて、信長様は私を抱きしめたまま私たち二人の体を起こした。


「私としても無粋な真似はしたくなかったのですが、空良に客人が来ておりますので、やむを得ず……」


決して、やむを得ずと言う顔ではない光秀さんは、ニヤリとしながら私を見た。


「………私に、お客様?」

この京に知り合いなどいないけれど。


「誰だ?」

信長様も訝しげに光秀さんに問う。


「菖蒲姫です。本日安土に戻ると聞いて挨拶がしたいと」


「会う必要はない、断れ!」

信長様は私の返事を聞かずに語尾を強めて言った。


「で、でも信長様…」

「空良、貴様は黙っていろ。貴様を傷つけるかもしれん者になど、合う必要などないっ!」


私を抱きしめる腕に、僅かに力がこもった。

京での様々な事を経て、信長様の私を守ろうとする気持ちと行動はより一層強くなっていて、それは嬉しい反面、心配でもあった。


「信長様…、私は、菖蒲様に会おうと思います」


「はっ?」


「朝廷からは此度の件で、正式な謝罪があったと聞いております。それに、あの事件に菖蒲様は関係ありません。菖蒲様からわざわざ私にと言って来て下さったのです。会わないと言うわけにはいきません」

顔を合わせるのに気まずさがあるのは、私だけではないはず。それなのにどんな理由であれ来てくれた菖蒲様に会わないわけにはいかない。



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