第5章 心の内
「信長様っ!!」
秀吉さんが叫び勢いよく部屋へと入ると、信長はさっきの場所でそのまま横たわったままだった。
うそ.................動いて....ない?
もしかしてもう.........
「っ、.......空良お前.....信長様を」
夜叉の様な形相で私を睨みつけると、私の手首を掴む手に思いっきり力を入れ、秀吉さんは刀を抜いて振り上げた。
「っ......」
今度こそ、間違いなく斬られる!
私を斬ろうとしているのは予想していた人物ではなかったけど、これでいい。
目を閉じて、刀が振り下ろされるのを待った。
「死を恐れぬとはいい覚悟だ。褒めてやる」
秀吉さんがそう言うと、その後にヒュンと刀を振り下ろす音が聞こえた。
「秀吉よせっ!」
「っ............」
ピタリと秀吉さんの刀は私の額すれすれで止まり、ぱらりと前髪の一部が少し斬られて落ちた。
声のする方を振り返ると信長はまだ生きていて、片肘をついて身を起こし私達を見ていた。
「信長様、ご無事で!」
秀吉さんは慌てて刀を納め私の手首から手を離し、信長の元へと駆け寄った。
「煩い騒ぐな、空良は何もしておらんのに勝手に斬ろうとするな!俺が自分で刺しただけだ」
(生き.....てる.........?)
「自分でって........」
秀吉さんは状況を飲み込めず、言葉を詰まらす。
「空良」
信長が私の名を呼んだ。
「............は...い」
(ちゃんと、生きてる。)
「家康の部屋へ行き解毒剤をもらってこい。信長の薬をくれと言えば奴には分かる」
「は、はい」
家康さんと言う人も、その人の部屋がどこなのかも分からないけど、とりあえず、信長が生きている事が分かりほっとした私は薬をもらうため部屋から飛び出した。