第39章 台風一過 後編
「ふぅー、まずいな」
部屋を出て襖を閉めた俺は大き息を吐く。
空良が元気を取り戻すにつれ、俺の欲も元気を取り戻しており、煩悩で朝から埋め尽くされた体を空良に触れられるのはかなり堪えていた。
(空良を今すぐ抱きたい)
だが空良の体力的な事に加え子が流れかけたこともあり、安土に戻るまでは控えろと医師からは言われていて抱くわけにはいかない。
そのため必死で抑えてはいるが、先ほどのように空良に愛らしく触れられると、奴の甘い香りが鼻を掠め、どうしても抱きたい欲が湧き上がり、そのまま襲ってしまいそうになる。
花見に行く以前は、奴の回復が遅れていた事もあり、同じ部屋で寝ていたとは言え、褥を別に分けて奴の隣で寝ていたが、その後は一つの褥で共に眠っているだけに、我慢の限界はかなり近づいていた。
「部屋を分けねば今夜には襲いそうだな」
秀吉からの書状などない文机の前で、俺は先程の空良の泣きそうな顔を思い出す。
「泣かせぬと誓った途端にこれか」
だが、俺のあそこも疼いて悲鳴を上げているとは絶対に口が裂けても言えぬし、我慢の効かぬ男と思われたくもない。(いや、既にそう思われておるとは思うが……)
「ふっ、まるで元服前のガキの様だな。いや、あの頃よりも酷いやもしれん」
愛しい女を前に歯止めが効かぬ程に、抱きたい欲が抑えられぬとは……
(ここ最近は悪阻も落ち着いた様だし、とりあえず今日の三食を必ず完食させるのが先だな。そうなれば明日にでも帰り支度をして早々に安土に戻り、奴を抱いてやる!)
本日の食事に全てを託した俺は急いで厨へと向かい、全ての膳の献立を空良の好物にするよう指示した。