第35章 真相
「ふんっ、手間をかけさせるなっ、大人しくせよっ!」
羽交い締めを解いた将軍は私と向き合うと、私の頬を思いっきり平手打ちした。
バシッ!!
「きゃあっ!!」
強く叩かれた衝撃で身体は投げ出され、置かれてあった脇息にお腹からぶつかる形で倒れ込んだ。
「.......あっ!」
ぐにゃりと、脇息の先の丸みを帯びた箇所がお腹を突き刺した。
「.........あっ、.............っ.............あああっ!!」
決して鋭利な先では無いのに、お腹には鋭い痛みが走った。
「っあ、.........ぁぁっっ!!」
(痛いっ!......お腹がっ!)
「如何した?」
倒れたまま疼くまる私に驚き、将軍は私を覗き込んだ。
「っ...............」
お腹が痛いっ、でもここでお腹のことを知られたら.........
けれどお腹の痛みは尋常じゃなくズキズキと脈打つ様に痛み、意識も朦朧としだした。
「空良、......そなたっ!」
「えっ?」
将軍の驚く顔が向く方に視線を向けると.....
「っ!!」
真っ白な襦袢が脚の付け根辺りから赤く染まり出していた。
「えっ、.....血?やだっ、何これ.........っ何で血なんて.......」
痛みと滲んでいく血で混乱して、例えようも無い不安が押し寄せる。
それに、お腹が千切られそうに痛い!
お腹の子に何かが起きてるの!?
「っ、この私の寝所を下賤の血で汚すなど、例えそなたでも許さぬ!」
ドンっと、将軍は悶え苦しむ私の体を足で蹴り飛ばした。
「きゃあっ!!」
痛いっ!痛いっ!
お腹が......信長様.......助けて.........
「この無礼、そなたの命を持って償うがいい」
私の手から落ちた小刀を手にした将軍はその刀を振り上げた。
「っ........」
本当に、何て男なんだろう。
この男は、人の皮を被った悪鬼なんだろうか?
私から全てを奪ってまで手に入れようとしておいて、下賤の血で部屋を汚したから今度は成敗すると言う。
今まで何度も死にたいと、誰かに殺してほしいと思ったけど、こんな男の手で死ぬのかと思うと死ぬ事が初めて悔しく感じ、死にたく無いと心から思った。