第35章 真相
「っ、.......信長様っ!助けて、信長様ぁ...........ぁっ......ぅっ......」
最後の力を振り絞って声を上げた。
「信長など来ぬ!空良、まことに残念じゃがせめてもの情けでそなたの家族の元へと送ってやる」
悪鬼は事もなげに言うと刀を振り下ろした。
「っ、.................」
声を上げる事ももはや出来ず、振り下ろされる刀を見つめ、覚悟を決めた時...........
「空良!!」
スパンッと勢い良く襖が開くと、愛おしい人の声が聞こえた。
「御館様っ、伏せて下さいっ!」
.......光秀さんの声?
確かめる前にピストルの放たれる音が耳に届いた。
「ぐぁっ!!!!」
ピストルの弾は将軍の手に命中したらしく、将軍の手からは呻き声と共に小刀が落ちた。
「空良っ!!」
信長様.....と、将軍を押さえつける光秀さんと麻達...........
「空良っ、しっかりしろっ!」
私の身体を力強く支えてくれるのは、間違いなく信長様だ……
「っ、信長様っ.........」
本当は、怖くて仕方がなかった。
不安と恐怖で押しつぶされそうだった心が安堵し、溢れ出た涙で愛しい人の顔が滲んで見えた。
「空良、もう大丈夫だ」
「ふっ、ぅっ....... っ.......ごめんなさい.......私.........」
「何を謝る?貴様は何も悪くないっ、空良っ、しっかりしろっ!空良っ!」
大好きな信長様の声なのに........
「お...なか............」
お腹が痛くて........意識がどんどん薄れていく。
「腹がどうしたっ、空良っ、空良っ!!」
お腹の子までもしも失ってしまったら、やはり私は皆を不幸にする傾国の姫なのかもしれない.......
「.......ごめ.......なさい............」
信長様に伝える前に、この子を危険に晒してしまった……
「お腹の子を………助けて……」
信長様と私と、このお腹の子との未来を奪わないで……
「空良っ!!」
私の意識は、そこで途切れた…