第35章 真相
「どこを頼っても、みな表面上は歓迎しておきながら、いざとなると手を貸そうとはせぬ。そんな奴らに嫌気がさし我が故郷が恋しくなってのう、せめて丘から京の都が見えぬものかと、あの見晴らしの丘へと登ったのだ」
「………あそこから…京は見えません」
「そなたの言う通りじゃ。眼下に広がるのは里の風景だけで、余計に京の都を恋しく感じるだけであった」
……全然話の先が見えない。
聞く限り、この方も辛い思いをされ郷愁の想いであの丘に来たのに、そこから何故夜襲に繋がるんだろうか?
「だがそこで、京の都以上に心惹かれるおなごに出会った」
将軍の目は、急激に熱を帯びる。
「空良、そなただ」
「えっ?」
「あの日、息を切らして丘を登って来たおなごの元気の良さと瑞々しい美しさに私は心を奪われた。あの丘を去った後も、そなたの事が頭から離れず、.......だから私は、朝倉にそなたを探すようにと頼んだのだ」
「朝倉様に.......?」
「そなたの美しさは越前では有名であると朝倉は言い、宴を開きそなたを呼び寄せたというのでその宴に顔を出して見れば、いたのはそなたではなくそなたの母であった」
「母上..........」
父上と母上が朝倉様に突然呼ばれた理由って、これだったって事?
「そなたの母も確かに天女の如き美しさであったが、とうがたっておった故、やはりそなたを呼べとそなたの父に言ったのだが断りおった」
父上...........
「そなたを恋しく思う気持ちはあったが、一晩ならそなたの母を夜伽に呼んでやっても良いと思いそなたの父に言いつけたのだが、阿呆よの。激怒してそなたの母を連れて朝倉屋敷より出て行きおった」
「そんな事を......!?」
誰よりも母上の事を大切にしていた父上が、その様な事を了承するはずがない!!
「京を追われた身とは言え、私の命令は絶対だ。なのにあの様な下賤の者に.......」
将軍の手は、あの頃を思い出しワナワナと震え出した。
「そ、それで私の屋敷を......?」
そんな事で!?