第35章 真相
「まぁ、信長がここに来た所で、お前は信長にはもう会う事はできないがな」
「えっ?」
「言ったろ?お前は政治的価値があるって」
もう信長様に会えないって、何を.......言っているの?
「ふんっ、やっと顔色が変わったな」
ニヤリと、元就の口角は分かりやすく上がった。
「本当に....どこかに私を売り飛ばす気?」
政治的価値のある売り方をするって事?
「そうだ、だが安心しろ。外国の言葉も通じねえような奴らにじゃねえ。....まぁある意味言葉の通じない奴だが......あぁ、だがお前にとっては地獄だな。何せ、お前の家族を滅ぼした張本人に買われるわけだからな.....」
「.......今.....何て?」
私の家族を滅ぼした張本人!?
「何だお前、あんな悲惨な目にあって犯人知らねえのかよ?随分とお花畑な頭してんな」
「っ、それは....」
信長様が蘭丸様から犯人を聞いて知っている事を私に隠している事は分かっていたけど、それは私を守るためで、無理に聞き出してはいけない気がしていた。
「信長が片時も離さず大切に囲ってるってのも嘘じゃねえみたいだな。だがそれも終わりだ」
パンパンっと、毛利元就は手を叩いた。
次の瞬間襖が開くと、三人の女中が中へ入ってきた。
「っ、何をする気?」
「はっ、やっぱり花畑だな。売りモンを綺麗にするんだよ」
女中達は私の両腕をガシッと掴み部屋の外へ歩くように促す。
「やっ、離してっ!」
「おいおい、お前に拒否権はねえ。痛い思いをしたくなけりゃ大人しく従え」
「っ、」
男の目は本気だ。これ以上騒げばどんな危害を加えられるか分からない。
幸い、お腹の事までは気づかれていない。
何があっても、お腹の子だけは守らなければ....
「そうだ。初めからそうやって大人しく言うこと聞けってんだ。………おいっ、連れて行けっ」
「「「はっ!」」」
信長様によく似た紅の瞳でも全然違う。温かみも何も感じられない男の冷めた瞳に見送られ、私は女中達に部屋を連れ出され、更に屋敷の奥へと連れられて行った。