第34章 嵐到来
「如何した?」
その姿から、何か予期せぬ大事が起きた事が予測できる。
「空良が、何者かに攫われました」
「............何?」
「つい今しがた、裏門を出た途端姿が見えなくなったそうです」
「裏門?......何故そんな所から外へ出る必要が?」
「詳しい事は分かりません」
「麻は、奴は何をしておった?」
この様な事が起こった時の為に、麻を侍女として同行させたはずだ。
「麻は後を追いかけると、投げ文をしたまま未だ戻っておりません。恐らく.....場所を確認次第、戻るものと......」
「麻であれば見失う事は無かろうが......一体どうなっておる、なぜ空良が........?」
麻がまだ戻らぬと言う事は、敵はまだ移動を続けていると言う事か......あまりここから離れると見失う可能性も出てくる。
「光秀」
「はっ!」
「鷹狩りは中止だ。急ぎ兵を集め空良の救出に向かう」
「はっ!」
「家康、貴様も手を貸せ」
「はっ!」
「無闇に動いても時間の無駄になる、先ずはあらゆる可能性を探るぞっ!」
「「はっ!」」
空良必ず無事で待っていろ、すぐに助けてやる!
・・・・・・・・・・
「空良が攫われた可能性は四つ。俺を恨む者、空良を俺から遠ざけたい者、もしくは、越前にある空良の屋敷を襲撃した者......」
「最後の一つは?」
答えは分かっていても、家康は確認をしたいのか最悪の四つ目の可能性を確認して来た。
「四つ目は、すべての可能性を網羅した者の仕業だ」
「っ、最後の可能性は考えたくないですが、どの可能性に当たっても、空良の身が危険な事に変わりませんね」
家康はごくりと息を飲んだ。
「国境は全て封鎖した。......だが織田の領地になっているとはいえ敵の多いこの地で、完全とはいかん。しかも圧倒的に兵が足りん」
三姫の事があったばかりで、朝廷やその他の大名の力を借りるのは難しい。かと言って、安土より兵を待っていてはそれこそ空良の身が危険に晒される。