第32章 暗雲
「の、信長様っ!?」
倒れた私の上に信長様は跨がると、私の両手首を頭の上に掴み上げ、紐で縛った。
「なっ、何を!?んっ!」
急な口づけは遠慮なく呼吸を奪い、片手が袷の中へと侵入した。
「っ、やっ!」
愛しい人との行為だけど、これは違う。犯される様な行為に、頭は混乱するばかりだ。
「はぁ、はぁ、何で........?」
何も答えてくれないその冷淡な目は、私から視線を逸らして隣の部屋に固まっている三姫に向けられた。
「俺の夜伽は少し変わっておってな、普通に抱くのではつまらんゆえ、拘束したり媚薬を使って毎夜この女と睦み合っておる。そろそろ二人では物足りんと思っておった所だ。貴様らも早く来い」
「............っ、え?」
(信長様.....今なんて....!?)
愛しい人の言葉とは思えずその人を見つめるけれど.......その表情からは何も読み取れない。
「貴様ら、先程までの威勢はどうした?俺を、満足させるのであろう?」
信長様の言葉に対し、三姫達は着物を握りしめてわなわなと怒りで震えている。
「信長様っ、どうしてこんな事!」
問いかけても答えてはくれない信長様は、私の襦袢の紐に手を掛け解き始める。
「やっ、やだっ!信長様っ!」
何でこんな事に?
意味が分からず強い力で押さえつけられ抵抗もできない身体は、三姫の前でどんどん暴かれて行く。
「貴様ら早くしろっ!夜毎、俺達の睦み合う声を聞いて身体が疼いておったのだろう?望み通り抱いてやると言っておるのだ。着物を脱ぎ捨てこちらへ来いっ!」
「先程から何を言って......姫君様はただ信長様とお話をしに来ただけなのに......」
ここまで機嫌を損ねるほどの理由が分からない私は、思った疑問を口にした。
「空良、なぜ貴様がその事を知っておる?」
私の言葉に、襦袢の紐を解く信長様の手はピタリと止み、見た事がない程に冷ややかな目が私を見下ろした。