第32章 暗雲
「あの娘は、自分では信長様の力になれない事をよく理解しております。だからこそ、私達と信長様が一夜を過ごす事を了承したのです。本当です」
「お願いします。あの娘にできて私達にできない事などありません」
「私なら、もっと信長様を満足させて見せます」
女が三人、交互にぎゃあぎゃあと煩くわめく。
それはまるで、俺が身内を手に掛け殺した時の母の様で、俺の神経をどんどん逆撫でして行く。
「誰かおらぬかっ!」
「はっ、お呼びでございますか!」
廊下で控えていた者が俺の声を聞き襖を開けた。
「空良をここへ呼べっ!」
「はっ!」
この様な戯言信じてはおらぬが、空良が今ここにいない事に妙な胸騒ぎを覚えた。
「っ、信長様っ!空良は、あの娘は関係ありませんっ!」
「そうですっ!私達とも、ちゃんと向き合って下さいませっ!」
「お家の為のみでこの様な大胆な行動に出ているわけではありません!信長様をお慕いしているからこそ、どうかお情けを.....」
女達は再び吠える。
何もかもが空良と正反対の女達に怒りは更に増幅する。
「黙れっ!」
「「「.............っ!!」」」
女達は息を呑んでピタリと吠えるのをやめた。
「それ程に言うのならば、さぞかし俺を満足させられるんだろうな?」
「...........も、勿論です。あの娘には負けません!」
「分かった。ならば全員着物を脱いで寝所で待つがいい」
「えっ?全員とは、どう言う意味ですか!?」
「言葉通りの意味だ。一人一日づつなどと時間をかけずとも、三人まとめて相手をしてやる」
「「「なっ!!」」」
女達の顔は屈辱で怒りの色に染まって行くが、俺の怒りはそんなものではない。
「異論は唱えさせぬ!じきに空良もこの部屋へとやって来る。四人まとめて同時に相手をしてやる」
俺の怒りは頂点に達していた............