第31章 京宴 後編
「空良、今戻った」
「お帰りなさいませ。先に寝てしまってすみません」
「構わん、貴様の寝顔を愛でるのも楽しみの一つだ。このまま俺に掴まれ、部屋へ行くぞ」
優しく私を見つめる信長様の言葉に頷き手を伸ばすと、ふわりと身体が宙に浮いた。
ぎゅっと逞しい首に手を回すと信長様の匂いに包まれる。
「どうした、寂しかったか?」
「っ、はい」
「ふっ、素直だな。俺も会いたかった」
額に信長様の唇が当てられ、どきどきと胸が高鳴る中、夜の渡り廊下を進んだ。
信長様の部屋に着くと、褥にそのまま寝かされた。
男らしく安心できる匂いの中にいた為か、一時は冷めていたはずの眠気はまた新たな睡魔を連れて来ていた。
信長様がお着物を脱いで寝間着へと着替える音が聞こえて来る。
手伝って差し上げたいのに、身体は眠りたいと言っていて重く、その音だけを聞いたまま、私は布団の中で目を閉じて浅い眠りにつき始めていた。
暫くすると信長様が布団の中へと入ってきて、顔や首に温かな唇と手の感触を感じ始めた。
(あ、するのかな......)
「ん、信長様......、あの、致しますか?」
毎晩の様に求められるから今宵もそうなのだと思い、眠気に襲われながらも口を開いた。
「ふっ、今宵は致さなくていい。少しだけ触れさせろ」
「...........はい」
うっすらと開けた目を長い指に閉じられ、優しいおやすみの口づけが落ちた。
(触れるって、どう言う事だろう?)
信長様の言葉を不思議に思いながらも、その大きな手に撫でられると心地よくて、再び夢うつつ状態に入っていく。
ちゅ、ちゅっ、と口づけの音と掌が肌を滑る音が部屋に響くなか、シュ、シュッ、と次は寝巻きの帯を紐解く音........
(寝間着も、脱がすのかな.....)
寝ぼけた頭でそんな事を考えていると、少し体を浮かせられ、シュルンっと帯が抜き取られた。
「っ、信長様........?」
これには流石に驚いて目を開けた。
「良い、そのまま寝ておれ、おれが勝手にする」
「でも.......」
(本当はしたいんじゃ.......)