第31章 京宴 後編
信長様には、京での政務が落ち着いた頃を見計らって、安土に戻る前にはお伝えしたいけど........
喜んで、くれるかな?
思うのは、その事ばかり。
驚くのかな?
それとも、いつもの涼しい顔で「そうか」と素っ気なく返事が返って来るのかな?
信長様は一体、どんな反応をされるのか.....?
早くお腹の子と一緒に抱きしめて欲しい。
家族を失った私に再び家族を与えてくれた信長様に、私は一体何を返す事ができるんだろう?
少し先の未来をあれこれ考えながら、心は穏やかだけれど、信長様を思う時の胸の鼓動と三姫達の騒がしさに囲まれながら、今日も旅先での一日を終えた。
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本日も会食で遅くなる信長様を待つこと少し......
(ね、眠い....)
どうやら、ここ最近感じていた眠気も悪阻の一つらしく、夕餉、湯浴みを済ませた身体は眠りたくて仕方がないらしい。
眠らない為に始めた小物作りの作業中でも、どんどん睡魔に襲われる。
「空良様、空良様?」
こくりこくりと頭が上下する私を麻が呼び起こす。
「.......あ、私寝てた?」
「はい。針が顔を突かないかと心配です。今宵はもう、お休みになられてはいかがですか?」
「........でも、信長様が頑張られているのに私だけ寝るわけには、きちんとお帰りになられるまでは起きていたくて......」
一日の始まりと終わりには、顔を見て挨拶を交わしたい。
「ですが空良様のお身体はもうお一人のものではありません。それこそ無理でもしてお腹のややに何かあったらと......」
心配そうに説得する麻の言葉に私も頷くしかない。
確かに、無理はしないと言ったのにしている所がある自覚はある。
眠気以外にも気持ち悪さは続いていて、信長様と一緒に食べない昼餉と夕餉には、ほとんど手をつける事ができないでいた。
「そうだね。この子のためにも今日は休もうかな」
「是非そうして下さいませ。信長様が戻られましたら、優しくご自身の寝所へとお運びくださいますわ」
「う、うん.......」
揶揄うように言う麻の言葉に顔は途端に熱くなる。
そういえば、確認したい事があった事を思い出した。
「あ、あの、一つ聞いてもいい?」