第30章 京宴 中編
信長様はごろんと褥に横たわり、私を腕の中に閉じ込めた。
逞しい胸板に頬を寄せると、少し早い鼓動が聴こえる。情事が終わった後の甘くて大好きなひと時........(気を失って眠る事が多々ある為、とても貴重.....)
「空良、周りに誰かが寝ておるからといって、何がそれ程に貴様の心を騒がせた?」
私の髪に唇を押し当てながら、信長様は私に問いかける。
「それは.......ここは天主と違って人払いもされていないですし、やっぱり、声は聞かれたくない......です」
「ふっ、今宵の貴様も愛らしく啼き声を上げておったからな」
「だ、だから声は耐えたかったんですっ!」
その”啼き声”を私に上げさせた張本人は人の気も知らず、ちゅっ、ちゅっと音を響かせて、ご機嫌に私の顔中に口づける。
「んっ、それに.....、今夜宿泊されている姫達は、その、信長様のご正室候補の方々で..........、過去に信長様と関係を持たれた方々だと.......だから余計に聞かれたくなくて.....」
気にしないようにと思っても、淫乱などと言う言葉を言われた後では、考えないようにすることは難しい.....
「はっ?.....貴様....今何と言った?」
信長様のご機嫌な顔は、驚きへと変わる。
「あ、ご存知ありませんでしたか?信長様のご正室候補の姫君達がこちらにお泊まりなのを......」
「泊まっておるのは知っている。貴様の口から俺の正室候補の姫という言葉を聞くのも腹立たしいが、俺が驚いておるのはその後の言葉だ」
信長様は私を抱きしめる腕に力を入れると、怪訝そうな表情を向けた。
「.......皆様、.......以前に信長様のご寵愛を賜った事があると......」
正しくは、一人からしか聞いてないけど、一人が言った事をみんなと言ってしまう女子あるあるを許して欲しい。(しかも麻は違うと言ってくれたけど、実は疑っているって事も.........)