第30章 京宴 中編
「んっ!んんっ、....................っぷはぁっ!」
突然の息苦しさに抵抗できないまま危うく昇天しかけた所で、やっと息ができた。
「なっ、何っ?」
眠さと、息苦しさでバクバク言う心の臓に手を当てながら目を開けると、
「やっと起きたか.......」
「っ、..........」
会いたくて、会いたくて堪らなかった愛しい人が、いたずらを成功させた子供の様な顔で私を見下ろしていた。
「信長様っ!」
「姿がどこにも見えぬと思ったら、随分と趣向を凝らした部屋で寝ておるな」
ククッと喉元を鳴らしながら、信長様は、荷物だらけの部屋を見渡し笑った。
「寝心地は、見た目ほど悪くないんですよ?」
信長様の帰りを待つつもりが、いつの間にか深く眠ってしまっていたし......
「そうか。かような部屋で居心地が悪かろうと貴様を拐いに来たのだが、余計な世話であったか?」
「...............っ、いじわる」
私の答えなんか分かってるくせに.........
意地悪を囁く愛しい人に腕を伸ばせば、しっかりと掴まれ抱きしめてくれる。
「...........あの、宴に行けなくて、すみませんでした。私........っん!」
宴の事を謝ろうと口を開いた途端、黙れの口づけ.....
「そんな話は明日でいい。先に触れさせろ」
言い方は荒いけど、信長様らしい優しさが心に沁みた。
「っ、今夜は、戻られないと思ってました」
色々な感情が押し寄せ、鼻の奥がつんとした事を悟られない様に、私は話を続ける。
「貴様を抱かねば俺の眠りは訪れぬと言ったはずだ」
「っ、.....そんなに毎晩は、お相手できません」
「ふっ、その言葉、俺を煽っておるとしか思えん」
「だっ、だから困ってるんですっ!」
いつもいつも、何をどう解釈すればそう取れるのかを問いたい!