第30章 京宴 中編
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「空良様、夜も更けましたし、そろそろお休み下さいませ」
荷物の見つからなかった私たちは、宴に行く事ができないまま、呆然と時が過ぎるのを待つしかできなかった........
私が来ない事を信長様は不審に思われるから、文にて知らせると言う麻にお願いをして、本当の事は伏せて、体調が戻らなかった事にしてもらったけど........、今宵の為に、色々と用意をして下さった信長様にどうしても一言謝りたくて........
「もしかすると、今宵は大名屋敷にお泊まりで戻られないかもしれません。ですのでどうかお休みを....」
麻は私の体調を気遣って、先程から何度も休む様に進言してくれる。
私が起きていたら、その分麻も休む事ができない。今朝安土を出てからずっと私に付き合って働き詰めの麻には休んでもらいたい気持ちも勿論ある。
「もう少し待って戻られなかったら......眠る事にするね?」
「分かりました。私は外で控えておりますので何かありましたらお声掛け下さい」
「うん、ありがとう.......」
たった1日の出来事なのに、色々ありすぎて疲れたのは確かで......、麻が部屋を出た後、何もすることのない私は用意された褥にゴロンと体を預けた。
もし、大名屋敷にお泊まりになられるのなら、今夜はもう会う事が出来ない........
お部屋自体が分けられているからどの道一緒に眠る事はできないけど....一人で眠るのはこんなにも寒かったっけ...........?
寒さを感じる事なく熱を与えられる夜ばかりを過ごして来たから、なかなか暖まらない褥の上で寒さを堪える。
「戻られたら....何から話そう.......」
先ずは、大切な荷物を無くしてしまった事を謝らなくては.......