第30章 京宴 中編
長々と続いた宴が終わり寺へと急ぎ戻った俺は、怯える僧侶に空良の部屋へと案内させた。
「おい、どこまで行くつもりだ。ここからは修行僧や女中達の裏部屋であろう?」
「ひいぃ.....私は何も..... 」
僧侶は怯えるばかりで、これ以上を追及すれば気を失いそうなほどに体を震わせおぼつかない足取りで廊下を進む。
麻からの情報で大体の予想はついていたが.......
俺の女にこれ程の仕打ち......全員、ただでは済まさん!
廊下を突き当たると、物がぞんざいに置かれた物置部屋の様な部屋の前で正座する麻の姿があった。
「麻っ!」
「信長様.......お帰りなさいませ」
麻は居住まいを正して頭を下げた。
「空良は?」
「こちらの部屋に......信長様のお戻りをお待ちしていたのですが、疲れもありつい先程眠りにつかれました」
「そうか......」
眠ることができているなら大事はないな。
奴が無事だと知りほっと胸を撫で下ろす。
「先に現状を知りたい。何があったかを詳しく話せっ!」
「はっ!」
・・・・・・・・・・
「話は分かった。空良は俺が連れて行く、貴様も今日は休め」
「はっ!」
麻からの報告を聞き終えて空良の眠る部屋へと入る。
「何だこの部屋は」
狭い上に所狭しと置かれた布団と座布団の山......
寝られる様に空間を作ったとは聞いたが、地震でも起きようものならたちまちに寝ている空良の上に落ちて潰されそうな程だ。
俺の心配をよそに、愛しい女は図太くもその中で規則正しい寝息を立てて眠っている。
「ふっ、どんな時も、貴様の寝顔は愛らしいな」
奴の眠る布団に腰を下ろし、髪を梳く様に頭を撫でる。
「ん.......」
空良は少し頭を動かしたが目を開ける事なくまた眠りへと戻って行く。
「くくっ.....こんな状況でもここまで深く眠れるとは.......流石だな」
頭を撫でようが、髪を一房手に取り口づけようが、空良は中々目覚めようとしない。
だが、そろそろ愛らしい顔を見たい。
「少し苦しいと思うが、これで起きぬ貴様が悪い」
髪を撫でるのをやめた俺は、空良を起こすべく、呼吸を奪う口づけをした。