第28章 歯車
「貴様を抱いて間もない頃は、俺も緊張した事がある」
「え?」
「貴様が余りにもガチガチで、その緊張が俺にも伝わってきた事を思い出した」
「.......あ、........花火の夜の事ですか?」
そう言えば、そんな事を言われた様な気もする。
今も抱かれる時は緊張はするけど、あの夜は信長様の中の男を意識しすぎて特に緊張したっけ..
「どうすれば、貴様を満足させられるか、愛らしい声をもっと聞く事ができるのか、俺だけを見るようになるのかと、常に貴様には男として試されている気がしていた」
「試すなんてそんな.........、それに信長様は最初からいつも余裕で.......」
私は、酔わされるばかりで.....つねに後半の記憶も曖昧だ.......
「見せぬのが男と言うものだ。今も、貴様の綺麗な裸体を前に、俺の目は奪われ手が止まる」
手.......は、ずっと悪戯に私の胸の先を摘んで遊んでいると思うのだけれど.......でも、特別な存在だと言われているような気がして嬉しい。
「っ、.........、それ以上言わないで下さい。.....恥ずかしくて.....また、緊張してしまいますから......」
そうじゃなくても、心の臓はいつだって壊れそうに鼓動を刻んでいるのに........
「それもまた一興だ。貴様の緊張の鎧が剥がれ、快楽に落ちていく様も堪らなく唆られる。今宵も俺の腕の中で存分に愛らしく啼くが良い」
「ぁっ!」
緊張と言う言葉の意味を果たしてこの方は理解をしているのだろうか?
「んっ.....ぁっ、ぁぁっ」
遠慮と言う言葉もきっと知らない信長様の腕の中で掠れるほどに声を上げた私は、子守唄を歌う事などもちろん出来ずにその後深い眠りへと落ちた。